GPSのことを理解していますか?衛星測位システムとは?GPS以外にも世界では多数の衛星がある・原子時計と送信データ

GPSというのは、アメリカの軍事衛星システムのことである。ロシアはGLONASS、欧州はGalileoで、中国は北斗(BeiDou)、インドはIRNSSで、日本では「みちびき」でQZSSという。

アメリカが軍事目的で、衛星を使って地上の位置や高度を測定するシステムを開発した。アメリカのシステムは、Global Positioning Systemと言って、略して、GPSという。

GPSとはアメリカの衛星システム

このGPSは、大きな商業的価値があることが分かり、そこで意図的に誤差を混入させて精度を落とし民間への利用を公開した。これによって、航空、船舶、カーナビなど様々な場面で使われれるようになった。

GPSというのは、アメリカのシステムだということだ。アメリカ軍が持っているサービスなので、紛争地域などでは、限定した地域で自在に無効化することができることも分かっている。インドはアメリカにGPSを止められたために、自国の衛星を打ち上げることになった。それがIRNSSである。

アメリカと対立する勢力は、GPSに相当する、衛星測位システムを構築している。2019年時点の世界の衛星測位システムは以下の通りである。

世界の衛星測位システム

衛星を使って、地上の位置や高度を測定する「衛星測位システム」は、GPSだけではない。GPSがアメリカ軍のものなので、ロシアや中国が独自の衛星を打ち上げているのも当然である。

GPS アメリカ 32機
GLONASS ロシア 26機
Galileo 欧州 27機
BDS(BeiDou = 北斗) 中国 42機
IRNSS インド 8機
QZSS(みちびき) 日本 4機

合計すると、32+26+27+42+8+4=139機。現役の測位システムの衛星だけでもそれだけの数が地球を回っている。衛星の高度も方向も実は様々である。東西の方向に回るものもあれば、南北を行き来する衛星もある。

上位4つのシステム、すなわちGPS、GLONASS、Galileo、BDSは世界規模の測位システムであり、測位範囲は全世界を網羅している。軍事的な意味においては、全世界が自国軍の活動範囲であるという意思表示であるということである。

インドは、アメリカからGPSを無効化された痛手から自国での衛星を立ち上げた。日本では、衛星打ち上げについては、米軍GPSでは精度が低いため日本上空を南北8の字に飛ばして高精度を得るという説明をしている。

衛星には原子時計が搭載されている

衛星との距離を測るために、衛星から電波を発信した時間と到達した時間の差を図ると距離が分かる。と言ってもこれは簡単ではなくて、電波のスピードは光速で進む。

光速はおよそ秒速30万キロメートルなので、0.1秒で3万キロメートル、0.01秒で3000キロメートルだ。百万分の1秒でも300メートル進むので、高い時計の精度が求められるのだが、通常の受信機はスマートフォンや小型時計ではそれだけの精度が出せない。

そこで、複数のGPS衛星から受信した情報を合わせて、位置と時間とそれぞれを正確に求めるためには、4つの衛星から電波を同時に受信できる必要があるのだ。

(参考)
1秒で、300,000km
0.1秒で、30,000km
0.01秒で、3,000km
0.001秒で、300km
0.0001秒で、30km
0.00001秒で、3km
0.000001秒で、300m
0.0000001秒で、30m
0.00000001秒で、3m
0.000000001秒で、30cm

原子時計は、寿命があっておおよそ10年と言われている。新しい衛星ほど寿命は長いので、近年もっと寿命の長い衛星もある。GPS衛星も10年経った頃に原子時計の寿命が来ると、衛星としての使命が終わる。

軌道を補正するためのロケット燃料が尽きたり、故障したり、航行不能となった衛星が大量に浮遊していることが、今宇宙の環境問題となっていることは言うまでもない。

衛星からは位置情報と時間が送信される

GPS衛星からの信号を受信すると、GPSのいる場所と時間が送信されてくる。どこから何時に発信したかが分かる。受信した側で正確な時計で測れば、距離がわかる。

一つのGPSの信号を受信した時に、仮に原子時計レベルの正確な時計を持っていたとすると、そのGPS衛星との距離が分かる。でもそれだけでも地上のどこにいるのか分からない。

GPSの4機受信が必要な理由

そこで別のGPSの信号を受信できれば、範囲が狭まるけれども、一点には決められない。そして3機目のGPSの信号を受信できると場所が特定できる。でもそれは受信機側に原子時計相当の正確な時計がある場合だ。

そこで4機目のGPSの情報が必要になる。現在位置を把握した上で、受信側の時計の誤差を4機目の時間を含めて再計算するわけである。

これでやっと正確な位置が計算できる。でもこれだけで完全に正確な位置が得られるわけでは無いのだ。


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