ピアノ室の防音と換気の問題に取り組む(1)

引越しに際してピアノ室を作った。大切なことは、防音と空調(換気)の機能である。防音室をちゃんと作るには、200万円程度で可能ということもあれば、建物の構造や広さ、防音レベルによっては500万円以上ということもある。

どのレベルの防音室が必要でどのレベルのものを目指すかという見極めが重要となる。敷地が広いとか、隣の家まで100メートルも離れている家であれば、防音が不要だったり、あるいは安価で済む。

ただ多くの場合は、家が密集した地域で、防音効果とコストとをぎりぎりのところで見合うようにしなければいけないので、計画段階で、ものすごく神経を使うことになる。

お金を必要以上に掛けても勿体無いし、かと言って十分な効果が得られなければ工事代金そのものが全部無駄になってしまう。

ピアノ室の防音と換気

我が家では、何も知らずに改築に臨んだことで、いろいろと失敗もあった。次には失敗しないよう綿密な情報収集を行い、目的にあった業者を選んで進めて行きたいものだと思う。もちろん、次がある、という前提である。

ピアノ室を防音するためには、換気装置の導入は必要不可欠であることを当時は知らなかった。防音も換気のことも、全く何も知らなかった。

ピアノ室の防音のコストが100万円程度であったのは、住宅リフォームの全体の改装の内数となっているので、必ずしも正確ではないかもしれない。

インプラス(二重窓)では、補助金申請ができたために減額につながった。このような減額分もあるので、実際にはもう少しお金がかかることもあるかもしれない。(インプラスは大変に効果が大きかった。後述する。)

低コストにして高い防音効果

防音室の性能は、最初の3年間はほぼ問題がなかった。半地下だったことも幸いして、アップライトピアノの音は外からはほとんど聞こえないくらいにすることができた。とても満足していた。防音ドアもピアノのフォルティッシモを完全にシャットアウトできるほどの効果であった。(体感上の表現しかできないのが、ちょっと残念。)

今にして思えば、D-40くらいの遮音性能が出ていたのではないか。室内の90dbの音が、屋外では50dbにまで音が小さくなるのがD-40という。正確には計れていないけれど。

(*注:その後、簡易的な騒音計を購入して時々計測してみた。音量と騒音計については「音楽を大きな音で聴くことの弊害」参照)

屋外に対しては10センチ間隔で二重に設置したステンレスサッシの窓は大いに効果があり、室内との境の「防音ドア」もいい感じだった。

二重のサッシはとても良かった。インプラスというのだ。窓の内側にもう一つ窓を付けるということだ。冷暖房の省エネにもなるだけでなく、結露もなくなった。また壁自体も断熱材をふかして壁が厚くなり、防音効果と断熱効果の両方を格段に向上させることができたようだ。

(改装前は床近くの低い部分の壁にも結露ができていたらしく、黒カビが付いていた。しかし、改築後は、結露は全く発生しない。本当にすごいことだ!)

防音効果って、長続きしないものなの?

ところが、5年経ってみると、防音性能が落ちてきた。室内に向いた防音ドアに密着する部分のいわゆるゴムパッキン的な部分は痛んでひび割れてきた。うむ、これはある程度想像がついていたので、それほど驚かない。(でもちょっと早いかな? とは思う)

問題は、そういう消耗部分ではなくて、壁自体の防音性能が落ちてきたことだ。遮音パネルなのか? あるいは吸音ウール自体が劣化したのか? 湿気とかで劣化が早まることもあるらしい。

構造は、大体で言うと、外壁があって、内側に吸音ウールがぎゅっと数センチ詰めてあって、その上から遮音パネル(ダイケンのGB01011-Sという型番のもの)が貼ってあり、最後は普通の室内用のクロス貼りになっている。壁が厚くなった分、部屋も少し狭くなっている。(他にも薄いボードが入っているかもしれない)

防音性能が劣化してきたのが、ちょっと残念な感じがしている。防音材に寿命というものがあったのか。そんなことは全く考えもしなかった。そんな説明はなかった。説明はなかったが、永遠の耐久性というものは存在しないことは知っている。なので、どの程度の耐久性があって、どのくらい経過したらメンテナンスしなければいけないのか、説明が欲しかったところである。

一度作り込んだ壁をまた剥がすということになるとそれは大変だ。壁の張替えはコストがかさむ。ピアノや家具の出し入れも大変に面倒くさい。いろいろと悩むところである。

やはり最大の問題は換気!

さて、もう一つの問題は、換気である。それに気づいたのはずっと後になってからだ。アンディ・ウィアーのSF「火星の人」を読んだ影響で、二酸化炭素濃度計をわざわざ調達して、ピアノ室に設置した。その結果、大変ショックなことがわかったのだった。

防音室では、換気装置がないと2時間くらいで二酸化炭素が1000ppmを超えてしまう。2人いると1時間、3人だと40分だ。酸素は、空気中に20%もあるからほとんど減らないのだ。密室では二酸化炭素の濃度が高くなって、頭がぼーっとなったりする。

アーサー・C.クラークのSFの名作「渇きの海」も改めて読み直した。うーむ。やっぱり、二酸化炭素が問題なのだった。30年前に読んだことはあったのだが、全く教訓として残っていなかったのだ。

二重窓にして、防音ドアにしたために、密閉度が著しく高まることとなり、二酸化炭素がこもってしまって、すぐに生活可能レベルを超えてしまうのである。一般住宅の24時間換気が義務化(建築基準法の改正は2003年7月1日)される前に建てられた家なのである。

換気装置の設置は、すぐにもしたいのだけれど、この部屋は半地下のせいもあって、窓が大きくて、換気装置の設置がとても難しいのである。窓が大きくてよかったとか、言っている話ではなかったのだ。

窓が北面と東面にあるので、窓を小さくして梁を強くして・・という案もあったのだ。

今も頭を悩ましているけれど、換気の業者さんってなかなか馴染みがないので、ちょっと困っているところだ。それがしばらく続いている。相談する先は、電気屋さんではなくて、リフォーム屋さんになるらしい。

問題と課題と教訓はたくさんあるけれど、ただ一つ救いなのは断熱性能は落ちることなく、真冬の壁も冷たくならないことだ。窓も結露なしだ。(とはいえ、永遠はない。いつか、劣化するのだ。)

いつも換気を見守ってくれる

それはこれ。

我が家の心強い友人である二酸化炭素計である。「今ちょっとCO2高くなりだしたところ」である。今の我が家ではアラーム設定で1500ppmを超えるとピーピーなるようにしている。

(この二酸化炭素計、2019年11月頃にリコールが出た。電池の液漏れが起こりやすく無償交換されるという。別に命に関わる危険な障害ということでもないのに、なんと良心的な対処であることか。)

家では愛情を込めて二酸化炭素計のことを「ピッピくん」と呼んでいる。

二酸化炭素が一年を通して一番低くなるのは、東京では5月くらいだということを知った。400ppmを少し下回るくらいになる。やはり一番空気が爽やかなのは、東京では5月なのだ。

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