ひとり言ついて考えながら、そこから心の安定や、日常生活の煩わしいことから解放される方法などを考えてみる。ひとり言は、あまり良いこととはされていないが、良い面もあるのではないか。
ひとり言を発する状況や心情を自覚することで、考え方や気持ちを切り替えるきっかけにすることができると思う。
ひとり言の種類と効用
前向きな感じのひとり言
ひとり言というと、まず最初に、前向きな感じ。
言葉としてはこんな感じ。
・よっしゃ、やるか。
・〇〇してから、〇〇やって、と。
・あれはどうしようかな? こっちにしとくか
・なんか、楽しみだな!
やる気があるとか前向きな時に発する言葉であるが、気分を奮い立たせたいときにも言う。期待効果はおおよそ次の通り。
・気持ちをやわらげる
・ストレスを解消する
・思考を整理する
・手順を確認する
・精神統一する
・集中する
・決意をかためる
何かを決断するような時や、プレゼンとかステージとか緊張する事に当たる時とか、自分の気持ちを整える必要がある時に、自分の言葉を自分の口から発して、自分の耳で聞き、自分の頭で再確認する、このステップが実に効果的だ。
ひとり言は、考えたことを言葉にして、自分の口から発音して、それを自分の耳で聞き、聴覚刺激を受け取って、再び脳に注入する。この複雑なステップを実行することで、脳に強く意識されることになる。
ケガレ落とし的な感じ
・ちぇっ、やってられないぜ!
・もう勝手にやってろって感じ
・関係ないぜ
こういう悪態的なことは、後ろ向きっぽいけれど、この不愉快な感じを自分の中にためておくのは良くない。内にためずに、言葉にして空中に飛ばしてしまいたい。
これは近くに人がいないところでやるのが良い。周囲の人に害が及ぶのは良くない。環境にも依るが、お風呂とかトイレでも良いかもしれない。一人で車を運転している時がベストである。悪い言葉は、遠く後ろに消え去るべし。
口から放った言葉は、宙に舞って、一瞬にして薄まって消えてしまうのである。気持ちを言葉に包んで、消し去ってしまうようなイメージだ。もう関係ない。すっきりしてしまおう。
会話のウォーミングアップ
そもそも会話する機会が少ない人もいる。仕事の種類や仕事の有無に依るかもしれないし、家族構成にもよるだろう。年代もあるかもしれない。
飼っている猫や犬に話しかける人も多い。日本語で返事は返ってこないかもしれないが、何かしら気持ちを伝えあっているわけで会話は成立する。ペットではなく、家族と思っている人も結構いる。
亡くなった人の写真に話しかけたりすることもある。これもひとり言という言葉のニュアンスにはちょっとフィットしない。では、相手が人形だったら、部屋の壁だったら、空に向かってだったら、あるいは自分と話すというのは、どうなるのか。
会話かひとり言かは、主観的なものであって、第三者が客観的に判別できないのではないか。
やり方によって前向きになる効果があったり、ケガレ落としの効果があったりするが、いずれにしても、自分と話してもそこそこ楽しいものである。会話のウォーミングアップにもなるかもしれない
記憶を定着させる
古典的なところで言えば、落語の中で八つぁんとかクマさんが、ご隠居に教わったことを忘れないように、口の中でぶつぶつと反芻しながら歩いていく場面は馴染みがある。
あれだけ何回も唱え続けているのに、うっかり忘れてしまうのである。走って電車に飛び乗ったら用事を1件忘れてしまったとか、ありがちである。
実は、これは「あるある」で、たくさんやりすぎると逆効果だという説もあるようだ。ノートに30回も書くと覚えられるのではなくて、逆に、脳が重要ではないとみなしてしまうという説明がされる。要は、飽きてしまうのだ。
とは言うもののたいていの場合は、2、3回復唱するとしっかりと記憶に定着させることができる。
心の中のひとり言
声には出さないひとり言というのもある。その中でも、何か目的があって考えているのではなく、何かしらの感情を心の中でぐるぐるさせているようなことがある。ここからは、正確に言えば、ひとり言ではない。
自分のどろどろとした煩悩が出てくるかもしれない。それでいいではないか。見えてきたら、何かしら対処ができる。
自分の気持ちに気づく
気持ちの落ち込んでいるような時、失敗したときなどには、いろいろと悔やんだりする。「あの時こんなことが起こらなければ、誰かが変なことを言わなければ、上手く行ったのに・・・」
一回きりで、すぐに忘れてしまえるようなことであれば良いのだが、ずっとくすぶり続けるような気持ちもある。
「金持ちの家に生まれていたら、こんなことで苦しまないのに・・・」
「もっと容姿が良ければ、きっと幸せになれたのに・・・」
それはそうかもしれないけれども、このような他責の考え方をしていると、つらいままだ。
お金や容姿のせいにしている自分の考え方に気づくことが大切だ。人をうらやむ気持ちにも気づく必要がある。これらは、いつまでたっても解決されず、事実によって否定されることもない。
「お金→快適」「美しい容姿→幸せ」という図式は、思い込みであって、そういうケースもあるという程度のことだ。これは決してロジックではない。妄想である。
くすぶっているひとり言をメモする
自分の境遇を嘆いたり、人をうらやんだりするような気持ちは、あまり自分の意識の表面に出てこない。それほど頻繁でもないだろう。
ネットをしていたり、人と話したり、仕事をしている場面で、ふっと、「ああ、いいなあ」と思うようなことがあったら、それは大切なポイントである可能性があるので、しっかりと記憶しておく。誰かが高いポストに就いたり、賞を取るとか注目されたとか、うらやむポイントが来たら同様に記憶に刻む。
「いいなあ」という気持ちを感じた時に、「よし私もやる」となれば前に進めるけれど、自分にはできないのだと諦めてしまっているなら、これは負のパワーの源泉となってしまう。
自分は何を求めているのか、何にひかれているのか、あるいは何が心にひっかかっているのか。自分の心を知るためのヒントがある。
自分の思い込みを知る
このような思い込みは、努力しても仕方ないとか、生まれ持ったものは変えられない、など負のパワーに満ちている。
負のパワーは、生産性が低い。でも自分では気づきにくい。それを、ひとり言を実践する中で、顕在化しやすくすることができるようになる。
人の、本当の目的は、お金でも容姿でもなくて、快適・幸せである。だから、そのために必要なことを考えるようにしてみる。
「どうしたらもっと快適になるかな?」
「どうやったらもっと楽しくなるかな?」
「お金が欲しい」のはなぜなのか、海外旅行がしたいのか、大きな家に住みたいのか、遊んで暮らしたいのか、老後の貯えにしたいのか。その先にある目的は何なのか。本当に必要なのか。
それがあれば本当に幸せになれるのか。実際にはお金が目的ではないのでは? 一番大切なことは何ですか?
簡単には答えは見つからないもので、過去にも多くの哲学者や宗教家が考え続けてきた。答えは見つからなくても、今の自分の考え方が正しいとは言い切れないと思えるようになってくるのでは? つまり自分は不幸であるとは言い切れないということ。
ささやかなことから=バサッと切る
深く考えているとちょっと疲れてくるので、とりあえず、すぐに実現できることに目を向けてみる。好きな音楽を聴くとか、大好きなものを食べるとか。それだけでも、現在の自分の幸福や快適のレベルがちょっと上がるはず。
振り返ってみれば、心の中のひとり言には自分を知るヒントがある。自分の心はよく分からないもの。でも心の底に押し込めている気持ちがあって、それもなかなかよく見えない。
でも、列挙してみればよい。一つ一つを見ていくことが役に立つこともある。ひとつずつ潰していくと、大切なことはあまり残らないことが多い。要らないものは多くて、それはバサッと切り捨ててしまえばよい。本当に必要な事って、そんなにたくさんは無いものである。
自分のためになること、自分が楽しくなることを考える。そして一つだけでも勇気を出してやってみることだ。