トイレットペーパーを選ぶなら「シングル・香り無し」が良い理由

トイレットペーパーには、ダブルとシングルや、香り付きと香り無しなどの種類がある。

どう違うのか。何を基準にして選べば良いのか。

もちろん、個人の好みで決めれば良いわけだが、実は「シングル・香り無し」が良いという明確な理由がある。

トイレットペーパーの製法について

まず、トイレットペーパーの製法をざっと見てみる。トイレットペーパーも他の紙製品と同じく、パルプを原料として、新しいパルプ材もしくは再生紙原料から作られる。

通常の紙とは異なるのは、柔軟剤を入れて仕上げられることである。これはティッシュペーパーも同じだ。ふわっとした仕上がりを目指して製造されている。

紙に柔軟剤というと耳慣れない感じだが、トイレットペーパーも繊維なので、洋服と同じように柔軟剤を入れることでふわっとさせることができる。柔軟剤というのは、主に陽イオン性界面活性剤が使われている。(陽イオンのことをカチオンというので、カチオン性界面活性剤ともいう。)

陽イオンの反対は、陰イオンでアニオンという。陰イオン(アニオン)性の界面活性剤というのは、洗剤やシャンプーなどである。石鹸も界面活性剤の一種である。陰イオンの活性剤には洗浄効果がある。

一方、陽イオンの界面活性剤は、洗浄効果はなく殺菌力などがある。リンスや制汗剤に用いられるものも陽イオンの界面活性剤が使われている。石鹸とは逆のイオンになっているので、逆性石鹸という言い方もする。皮膚に刺激性がある薬品が多い。

パルプ系の原料に柔軟剤を混ぜ、原紙を作り、裁断して、ミシン目をつける。これを円筒状の厚紙のロールに巻きつけてトイレットペーパーが作られるわけである。

トイレットペーパーの表と裏?

紙には表と裏がある。習字で使う半紙は表がツルツルで裏がザラザラになっている。ノートの紙のように表も裏もツルツルになっているものもあるが、基本、紙には、表と裏があり、縦目と横目がある。

トイレットペーパーにも表と裏があり、注意深く触ると判別することができる。シングルのロールペーパーでは巻いてある外側が表で、内側の芯がある側が裏になっている。触ってみると、表側は少しつるっとしていて、裏側は少しザラっとしている。

シングルのトイレットペーパーがあれば、表と裏を触ってみてほしい。ではダブルのトイレットペーパーの場合には、どうなっているのか、と疑問になる。

ダブルとシングルの違い

表がつるっとしていて、裏がザラっとしているのは、実はトイレットペーパーのシングルの話なのだ。ダブルでは、両側が表になるのように反対向きにより合わされて巻き上げられている。表と裏が交互になるように合わさっている。

摩擦抵抗の強い裏面が合わさることで、ダブルのペーパーとして合体する力となっている。とはいえ、裏面と裏面が合わさる摩擦抵抗だけではダブルの合体を維持できず時々剥がれてしまう。

同じメーカの同じタイプのトイレットペーパーのロールである場合には、シングルで60メートルだとダブルでは30メートルになっている。シングルの方は、倍の長さがあるのだ。

シングルもダブルも、通常は1枚の紙の厚さは同じで、表裏が逆で合わさっているだけである。

1.5倍巻きのロール

メーカーによっては1.5倍巻きというのもある。90メートルのシングルロールでは、ダブルにすると45メートルという具合だ。直径は1cmくらいしか差がない。

芯の直径は大体同じのようだが、正確には計測できないけれども、1.5倍の長さがあるということは、横から見た紙の部分の面積が1.5倍ということである。1.5に平方根は約1.22であるので、長さが1.5倍になっても、直径は2割増しちょっと大きくなるだけだ。

芯はどうせ捨ててしまうので、ペーパーが1.5倍というのは、パッケージと芯との両方を合わせて考えると、環境負荷が低いと思われる。50mや60mの小さいロールよりも、90mなど長いロールを選んだ方が良い。

トイレットペーパーの経済性について

シングルを使い慣れている人が、期せずしてダブルのペーパーを巻き取ろうとすると思いの外、多くの紙をとってしまい、分厚くなってしまうことがある。逆に、家でダブルに慣れている人も、職場の事務所や公共のビル等ではシングルが一般的なので、二種類を使うことが当たり前になっている。ダブルに慣れていても、また追加で巻けば良いだけなのでリスクはない。

何かといえば、これは経済性の話で、ダブルの方が一回あたりの使用量が多いという。研究データを探したが見つからなかったので、いずれ正確なデータを取ってみたいと思うが、インターネットにおける知識ベースによれば、1回の使用量は、シングルでは1.2メートル、ダブルでは0.7メートル掛ける2倍で1.4メートルという。

とにかく、ダブルよりもシングルの方が15%使用量が少なくなるということである。

ヒトは、重量を測る感覚よりも長さを測る感覚の方が優れている。そして、目で見えないものよりも目で見えるものの方が細かに把握できる。そしてトイレットペーパーの分量を手で量りとるのはものすごく困難な仕事である。

ダブルは消費量が多くなるので、「メーカーはダブルを売りたい」ということは間違いがない。その逆に、企業の事務所や公共の施設では、使用量を少なくしたいのでシングルになっている。

でも、ただダブルが儲かるということだけではなくて、ダブルはどちらも表なので、どちらに巻き取っても柔らかい表面が外に出るという効果があるのだ。

トイレットペーパーのホルダーへの取り付け方

スペインやポルトガル、ブラジルなどラテン系の地域では、ペーパーホルダーに紙を切る用途を兼ね備えたカバーが付いていないことが多いので、ペーパーをどっち向きに入れても問題がない。紙が手前に垂れるようになっていなくて、奥の方に下がっていることも多い。

紙が奥に垂れるようになっているロールのセットの仕方を、私の実家ではブラジル巻きと呼んでいた。私の母がブラジル生まれで子供の時はそうだったと言ったからだ。これは間違いではないのだが、でも今となっては、ひょっとしてブラジルの人から苦情が来るといけないので、新しい用語を当てなくてはならないかもしれない。

トイレットペーパーの取り出し方

ペーパーを取り出すときは、多くの人が紙を手前から上に持ち上げて、上から奥へ回して、巻き上げていくようである。つまり、トイレットペーパーを日本での通常の方式(手前に紙が垂れるよう)にセットして、車輪が前へ進むように巻いていく。

このようにすると、シングルのトイレットペーパーの場合は、裏のざらっとした面が表に来るようになる。

ざっくりした感じが好きな人は、この巻き取り方で良い。逆に、つるっとした感触が好きな人は、手間に釣り糸を手繰り寄せるように巻き取っていくと良い。

ただし、トイレットペーパーをブラジル巻きでセットした場合は、車輪が前進する巻き取り方で取った時に、表面が外に来るのである。実に奥が深い。

ミシン目について

ラテン系のトイレでは、ペーパーホルダーには蓋が付いていない。言うまでもなく、蓋は紙を切る用途を兼ねている。蓋がないので、人々はトイレで紙をちぎって取るのである。

その時に、紙が前に垂れていようと奥に垂れていようとどちらでもよくて、前進車輪で巻き取ろうが、釣り糸手繰り寄せ型で巻き取ろうが、それもどちらでも良いことである。しかもそんな些細なことに文句を言うような器の小さい人はいないのである。

逆にミシン目が付いているのに、カッターなどいらないではないかと言われる。現代ではほぼ世界中のトイレットペーパーにはミシン目が付いているのだ。なぜが蓋がいるのかと言われると逆に答えようがない。(空港などでは直径が倍もある大きなロールが使われていることがある。その大きなロールにはミシン目はなかった。)

香り付きと香り無しについて?

トイレットペーパーには、香りがつけてあるものと香りのないものがある。香りがあるのは、もともとはトイレの芳香剤のニーズをトイレットペーパーでカバーしようとしたものである。もう、必要はないのではないか?

香り付きは、実は紙に匂いがつけてあるのではない。製造工程で、ペーパーの芯に香料を染み込ませている。後から紙を巻いて、ビニールで包装された後に、その中でこもった香りが紙に染み込むという仕組みだ。

「香り付き」と「香り無し」があって、同じ値段だったら1990年代であれば、同じ値段だったら香り付きが安くて良いと思っただろうけれども、今はレス・ケミカルの時代なので、薬品が少ないほど売れるだろう。

香りの化学物質に多感な人もいる。香りの成分は、生理学的には全く無害なものであったとしても、それが人間に悪影響がないとは言い切れない。心理的な影響は大きく、無害だと言われるほど不安になる人もいる。化学物質の匂いで気分が悪くなる人もいる。

そして、無害である保証がどこにもない。製品には、香り付けの成分も表示されていない。

香り付きのトイレットペーパーは、芳香剤としては不十分だし、不十分なら無しで良い。

これからのトイレットペーパーは?

トレンドとしては、同じ機能であれば薬品の少ない方を選ぶ消費者が増えていく。今、メーカーが香り無しに積極的に誘導していかないと香り付きを最後に作っていたメーカーが損をすることになるだろう。市場では香り付きが圧倒的なメジャーであるので、香り無しを探すのに苦労するので仕方なく買っている人も多い。

今では、ほとんどのトイレが水洗になって、悪臭を放つトイレは激減した。逆に、香りに対しての刺激や柔軟剤のアレルギー等で不調を訴える人も増えている。公害ならぬ「香害」という言葉も一般化した。

香り付きである必要はもうないのではないか。香料の分だけでもメーカーはコスト削減できるのではないか。しかも、「環境に配慮」と謳えるのである。香り付きを止めても、誰も損しないどころか、メーカーも消費者にもメリットがある。

低コストでトイレットペーパーを作れるように!

そして、最後になるが、シングルとダブルでは、シングルの方が製造コストが低い。本来は、ということである。同じ値段で売っているけれども、ダブルよりもシングルの方が製造が簡単であることは、誰でもわかる。メーカーと消費者とは利益を共有しているのである。実は今は、ダブルの上のトリプルというのもある。

「シングル」を買って、これを世の中のメジャーにすることで、トイレットペーパーをシンプルにすることができる。香料も要らない。今は企業の意図と消費者の意図が一致していないようであるが、結局は作って売るメーカー側も買う消費者側も得をする話なので、もう少し時間が経てばより一層受け入れられるようになるだろう。

世の中を単純にしていくことで、不要な世の中のコストを抑えられるのである。働き方改革にもつながっていくのである。


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