ピアノのピッチと温度と湿度の関係について

ピアノのピッチと温度と湿度の関係について、自宅のピアノを使って調べてみた。温度や相対湿度の変化によって、ピッチがどのように影響するのか、データを取ってグラフ化した。

調査内容

・使用ピアノ:ベヒシュタイン(C.Bechstein Classic 118)、2005年ベルリン製
・調査期間:2018年7月25日〜8月1日
・ピアノ室の環境:容積約21m3、同時給排換気装置、除湿機/加湿機

・不定期に、湿度・温度にの変化があった時に、湿度と温度とピッチを計測

ピアノのピッチと温度との関係

湿度の影響を軽減するために、相対湿度50%未満、60%超えのデータを除外して、7件のデータについてグラフ化したものが以下の3つのグラフである。

(C4は真ん中のドのことで、C5はその1オクターブ上の音であり、C2は真ん中のドから2オクターブ下のドである。)

結果は、C4はグラフの近似式は右上がりになっているが、相関係数は0.0377であり相関は弱い。C5、C2では、温度が下がるとピッチは上がっている。こちらも相関係数は0.1以下で、相関は弱い。

 

ピアノのピッチと相対湿度との関係

温度の影響を軽減するために、27℃未満、30℃超えのデータを除外した8件のデータについて以下のように3つのグラフに示した。

相対湿度とピッチの相関は、温度とピッチの相関よりも強かった。

湿度が下がるとピッチが下がる。逆の言い方をすれば、湿度が上がるとピッチが上がる。

湿度がたった5%上がっただけでも、ピッチが真ん中のド(C4)で、約0.2Hzも上がってしまう。これはちょっと大きすぎるなあと感じる。他のピアノでもやはりそうなのだろうか?

 

結論と考察

調査して分かったことは、
①温度が上がると、ゆるやかにピッチが下がる
②湿度が上がると、ピッチがかなり上がる
ということだ。

今回の調査では、以上のような結果になった。ピアノ業界で言われていることと一致する結果となった。おおよその傾向はつかめたと思われる。

ただし、今回の調査にはいくつか問題がある。まず、サンプル数が少ないことであり、またサンプルを取るタイミングもコントロールされていない。

もう一つはより大きな問題でデータの精度である。ピアノは木の楽器なので、温度と湿度の変化がピアノの木材に達するには時間差がある。今回の計測では、温度と湿度が安定した環境では測れていない。

以上の反省点はあるにせよ、インターネットでは今までほとんど公開されていなかった、ピアノのピッチと温度と湿度の関係をデータで示せたことは良かったと思う。

以前に、ベヒシュタインのピアノを所有している人が「天気予報を聞く前に低気圧が来るのが分かる」と話していたという記事を見て、もしかしてこの湿度への感度の高さはベヒシュタインの特徴なのではないかとも思った。

これを機に他のピアノでも、このようなデータが公開されて、共有できるようになることを願う。ピアノのブランドによっても、モデルによっても、いろいろと違いがあるのだろうと思う。

さてここで、ヨーロッパの温度と湿度とは、おおよそどのくらいであろうかと気になるところである。それも調べてみた。
→「ヨーロッパの温度と湿度について


関連:
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