【細幅鍵盤2】ショパンのピアノは細幅鍵盤、ベートーベンも細幅だった!

前回の記事:「【細幅鍵盤1】幅の狭い鍵盤のピアノ

19世紀には、いろいろなサイズの鍵盤があったのに、それがいつしか、大きな手の人用のピアノが標準となっていったのは、とても不思議なことだ。(→幅の狭い鍵盤のピアノ

ショパンのピアノは今でいう細幅鍵盤

ショパンの頃は、ピアノの愛好者は女性がかなり多く、ショパンも女性をたくさん教えていた。ショパンの音楽は今も昔も女性にも愛される曲である。もちろん男性にも愛好されてきたわけである。

しかし、一部の男っぽいピアニストたちにとっては、ピアノが女性的であると思われるのが好ましくなくガツンと男っぽい骨太なものにしたくなったのだと想像される。

何となれば20世紀の、それも1970年代にあっても(僕の子ども時代であるというだけだが・・・)、ピアノは女の子の習い事という風潮があって、中学校の合唱大会のピアノ伴奏では99%が女子であった。

その時代は、ちょうど日本でピアノが爆発的に普及した時期なのである。ヤマハとカワイでは大量生産に拍車がかかり、国内だけでなく輸出も隆盛を極めた頃であった。

ピアノは19世紀においても女性の好む楽器であったようで、チェンバロもピアノも大変に高価な楽器であり、工芸品でもあった。楽器は、今もそうだが、今以上に高価なものであった。女性はチェンバロやピアノに向かい、男たちはアウトドアスポーツ(狩りや戦争)に忙しくなったのである。

ピアノは男女どちらの楽器か?

楽器には性別などないのだが、ピアノの女性的なイメージをどうしても男の楽器に変えたいと考えた人たちがいて、彼らの思いはドイツの三大ピアノメーカーを取り込む形で進んでいった。

ピアノの男っぽさとは、ピアノが金属フレームを獲得してから、一層強くなったように思うのは、気のせいだろうか。超合金の合体ロボみたいなメタルパワーが実装されたわけだ。ピアノは、まさにそういう世界に持って行かれてしまう。

あるピアノ教師のレクチャーをインターネットで見ていたら、「ショパンの手の石膏像は残っています。それは10度がやっと届く位の大きさでした。ショパンのエチュード1番ハ長調では、ほとんどのフレーズはそのままでは届かないので、手の回転を十分に使って弾いていたことは間違いありません」という説明があった。

手の回転を使っていたのは間違い無いと思うけれど、「ほとんどのフレーズはそのままでは届かない」というのは正しく無い。

ピアノの鍵盤のサイズが今とは違うのだ。今のピアノの方がずっと大きくなっている。ベートーベンもショパンも現代の鍵盤よりももっと小さい鍵盤を使っていたのだ。

だから、10度のフレーズはほぼ白鍵と黒鍵が混じっても全て動かさずに押えることができたはずだ。ショパンのポーランドの生家にあるアップライトピアノは、鍵盤幅が現代のピアノのおよそ15/16であると読んだことがあるのだが、どうしても今そのデータが見つからない。

鍵盤のサイズが15/16とすると、現代のピアノのオクターヴが165mmであるので、154mm前後ということになる。ベートーヴェンのピアノでは159mmのものが確認されている。どれだけの期間、どのようなサイズのピアノを弾いていたか、はっきり言って正確には分からない。

確かに言えることは、バロック時代のチェンバロの鍵盤は現代のサイズに近いものが多いようである。当時の曲は片手でオクターヴを越えて弾く曲は無かった。その後のロマン派の時代は、ピアノを弾く人が女性が多かったこともあり、サイズが小さくなった。そして、20世紀直前からまた鍵盤サイズが大きくなった。

当時の楽器についての説明では、音色や音量に関係する弦の長さとか奥行きなどは比較的計測されていることが多いのだが、鍵盤幅が計測されていることは稀である。鍵盤の数までは数えられるのだが、鍵盤の幅が楽器によって異なっていたということを知らないと鍵盤幅を測ろうという発想が出てこないのだろう。

細幅鍵盤のピアノをぜひ復活させたい! バロック楽器、バロックのピッチを復活させたように、18世紀、19世紀の音楽ではその当時の楽器を復活させるのが良いと思う。

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