ピアノのペダルとベートーヴェンについて

ピアノのペダルは、現代ではおおよそ3個付いている。

グランドピアノでは、左からソフト・ペダル、真ん中がソステヌート・ペダル、右側がダンパー・ペダル。

アップライトピアノでは、左からソフト・ペダル、弱音ペダル、ダンパー・ペダルである。

ソフト・ペダルは音を柔らかくする。グランドピアノでは、鍵盤ごとハンマーがずれて筋の付いていない柔らかい部分で弦を叩くために音色が変わる。さらにもっと踏み込むと3本弦の音では2本しか打弦しなくなる。音量と音色との両方に大きな影響を与えることができる。アップライトピアノでは、打鍵の位置が弦に近くなって勢いが弱められることによって弱い音を出す仕組みになっている。アップライトでは音色は変わらず音量が弱まる効果である。

ダンパー・ペダルは、鍵盤から指を離しても、鍵盤が元に戻っても弦の音を止まらないようにする。すべての鍵盤の音を鳴らしっぱなしにする仕組みである。

ソステヌート・ペダルは、一般的にはグランドピアノにだけある機能である。鍵盤をいくつか抑えている時に、このペダルを踏むとその時に抑えていた鍵盤の音だけが鍵盤を離しても消えずに残るのである。実はあまり使われない。

弱音ペダルは、弦と鍵盤の間にフェルトが入って、音をかなり小さくすることのできる仕組みである。これは一般的にはアップライトピアノ特有の機能である。

さて、このペダルであるが、モーツァルトの頃は足元に付いているというわけではなくて、鍵盤の下にあって、膝で操作するようになっていた。モーツァルトのピアノはあまりスタッカートがうまくできなかったらしい。そもそもフォルテピアノ(ピアノとはちょっと違う楽器)や古い時代のピアノでは、現代のメカニックのように精密ではなくてスタッカートは切れが緩やかというのか、音が柔らかである。

ベートーヴェンの時代のピアノでは、ペダルが6個付いておりチェンバロ風の音を出すペダルもあったという。フランスの有名なピアノメーカーのエラールが1803年にベートーヴェンに贈ったピアノには、ペダルが4つ付いていた。フレームにはまだ金属が使われていない。重さは現代のピアノよりも格段に軽い。

ちなみにこのエラールのピアノは68鍵あり、音域はF〜Cだ。最高音は現代のピアノよりもオクターブ低い。ピアノソナタ ワルトシュタインや熱情を作曲した頃は彼はこのピアノを使っていた。ベートーヴェンは最高音まで使い切っていた。

1817年にベートーヴェンの47歳の誕生日に贈られたピアノは、イギリスのブロードウッド製で73鍵でC〜Cの音域だった。この楽器でハンマークラヴィーアが作曲された。アップライトではもごもごとこもってしまいがちだけれど、ハンマークラヴィーアの最低音のCは、この曲を強く印象付けて見事な効果を上げることができた。

ベートーヴェンは、最新のピアノを贈られて最高音や最低音が増えると、その度に最高音や最低音までを使う曲を作っている。「まだ新しい楽器は普及していないから、楽譜が売れなくなってしまう」とは考えずに、「私の曲を弾きたいがために、新しい楽器が売れるようになり、ピアノメーカーのためにもなるであろう」と考えたのだとすれば、すごいことだ。

横道に逸れて、ペダルの話からベートヴェンの話になってしまった。18世紀の後半になって、ドイツ勢のスタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、アメリカ勢のボールドウィン、チッカリングなどが競争するようになった頃に今の3本スタイルでほぼ一般化したようである。


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