石油は化石燃料ではなくマグマ起源(無機起源説)

石油は、化石燃料ではなく、マグマ起源であるという研究がある。つまり、石油は「植物の化石からできた限りある燃料」ではないということである。

石油は、地球の奥底のマグマの隙間から噴き出してくる物質で、無尽蔵の燃料であるというのである。

現代文明は石油のおかげ

石油は、英語ではpetroleumという。ラテン語のpetro(岩石)とoleum(油)からなる合成語である。日本語の石油もその直訳である。

石油は、黒くてドロドロした液体で、揮発性の成分と液体、固形の鉱物から成り立っている。石油を精製するとガソリンや灯油となり、世界の主要な燃料となっている。石油は様々な石油化学製品に加工され日用品にもなっている。

石油を起源とする製品は、現代の生活にくまなく浸透した結果、石油原料の製品がなくなってしまえば、影響を受けない業種はもはやほとんどないのではないかと思われる。

石油はいつ枯渇するのか?

もちろん地球は有限であるので、燃やした石油、あるいは加工した石油化学製品が再利用されるか、自然に還ることができる仕組みがないことには、いずれ資源は枯渇してしまう。

植物や生物の化石が起源だとする有機起源説に対して、マグマからできたとする説を無機起源説ともいう。

20世紀の初頭に、エネルギーの主流は石炭から石油に切り替わった。その頃に、石油は太古の植物の化石だと言われるようになったようである。でもそれは西欧とアメリカの話で、ソ連・東欧では無機起源説が定説であったという。

「あと30年」と言われ続けて、50年以上が経ち、今でも「あと30年」と言う。この石油の埋蔵量のいい加減な予測数値に呆れてしまった人も多いだろう。

そして今、長い間信じられてきた石油の起源の定説が揺らいでいるのである。

石油のマグマ起源説の有力な証拠

マグマ起源説、あるいは無機起源説について、有力な証拠も幾つか挙がっている。

1. 植物層より深い地層にも石油があるということ
2. 植物にはない金属物質が原油には混入していること
3. 高温高圧の中で炭化水素から石油を作ることも実験的に可能ということ
4. 油田は一度は涸れても何年か経つと、再び石油が湧いてくること

1. 植物層よりもずっと深い地層に岩盤があって、岩盤の下の植物の堆積がありえないようなところに石油が溜まっていることがある。まさに地下から浸み出してきたのではないだろうか。海の底に沈殿するようなこともあるだろうが、岩盤の下に入り込む可能性は考えにくい。

2. の金属というのは、バナジウム、ニッケル、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、コバルト、チタン、スズ、など約30種類の金属で、数ppmから数10ppmの濃度で混入している。

植物の化石にしては、こんなに金属が混ざるのはおかしいということのようである。これは必ずしも通常ありえないという高いレベルとは言えない。古植物学で重金属との関係を研究したものが見当たらなかった。

3. かつて有機物は実験室では合成できなかったので、有機物といったのであるが、今では多くの有機物が合成できるようになった。高温高圧の環境では、石油も合成できるのである。

マグマの主成分はケイ酸塩鉱物であるが、マグマには揮発性物質も含まれている。揮発性成分で最も多いのは水で、地下深くでマグマに溶け込んでいるのは重量比で5%程度で、次に多いのは二酸化炭素だという。(重量比5%なので体積比はもっと大きくなる。)

石油を作る原料「炭素、水素、酸素」は、地下に大量にあるということだ。

4. 枯れた油田がまた湧いてくるのは、無機起源説であれば説明がつくという。時間が経つとマグマから浸み出してくるということのようである。

これは掘削技術が向上してコストが下がったため再び採掘できるとか、そういう意味ではなく、その油田の埋蔵量が純粋に増加する現象のことを言っている。

 

原油を運ぶタンカーの事故などにより海に流出すると、海に生息する魚や動物そして海鳥などの皮膚、腎臓や脾臓に致死的な被害が出る。植物の化石が、これほどの毒性を持つということを感覚的には想像しにくい。

一方、石油が植物化石が起源であるとするのも、それなりの根拠はある。それは4億年の昔には今よりも二酸化炭素が20倍も強くて、ヒトにとっては生きることのできない環境であった。現在の二酸化炭素の濃度が3倍になっただけでもヒトにとっては注意が必要になる高濃度なのである。

その時の高濃度の二酸化炭素の空気によって、植物は思うがままに繁茂できる時代があった。その頃の植物の大量繁栄時代があったと考えられるからこそ、その化石が石油となったとされているわけだ。巨大植物が地球を覆っていた世界というものを現代人はなかなか想像できないのである。

しかし、そうだとしても上記1のように、なぜ「植物層より深い地層にも石油がある」のかを説明することはできない。今では、植物の化石が起源であるという根拠の方が少し弱いとさえ思われる。

ロシアのメンデレーエフが最初に提唱した

この石油の無機起源説は、もともとはロシアの学者メンデレーエフが1870年代頃に提唱した。メンデレーエフは元素の周期律表を作成した化学者である。その後も東欧では定説とされていたが、西側諸国ではあまり広まらなかった。

石油がずぶずぶと湧いてくるものであるということを好まない人々がいたということである。近年では、トーマス・ゴールドというオーストリア生まれでアメリカで活躍した天文物理学者が無機説を唱えており、話題に上るようになった。

石油の莫大な権益

そもそも石油というものは、莫大な油田の利権が絡んでいる。油田は、中東、ソ連、アメリカが主である。最近ではカナダで莫大な原油が埋まっていることが明らかにされたり、産油地図は塗り替えられている。石油が少ないと思えば値上がりするし、産出量が多いと値下がりする。

「石油は有限ではなかったのね、ラッキー!」と思うのは庶民の感覚なのだけれど、一部には「それはよろしくない」と思う人がいて、よろしくないと思った人達の方が数は圧倒的に少ないけれど、その人達の権力と富は大きくて、他の人々を圧倒しているのだろうと思われる。

アラブの石油王たちは、今では石油に依存しない方法を模索し始めているという。ニュースにもなっているが、ある石油王は様々な分野に投資を始めたということである。

石油王でなくても、原油は世界で大量に消費されるエネルギーの根幹であり、世界の市場で取引される極めて重要な商品でもある。投資家にとっても、長期予測に当たって少しずつ注目されるようになってきた。

原油の利権は誰にあるのか?

原油の価格を決めるのは、もちろん世界市場であるが、1バレルいくら?と値段を決めているのは、そもそもアメリカが基準になっており、ペンシルバニアに原点がある。

アメリカは、今まで世界の原油価格をコントロールしてきた。これからもコントロールしたいと考えているはずだ。今のところ、まだアメリカの原油の価格決定の影響力は持続している。

世界をコントロールするという発想が国の原点にあるという国家、アメリカ。これは、どう考えても普通じゃないと思うが、皆さんはどのように思われるのであろうか?

エネルギーの自給率

石油の世界では、探査・採掘・生産という上流部門と輸送・精製・販売という下流部門があり、これらの全体をカバーする欧米の巨大資本がいくつかある。これは石油メジャーと言われている。

1970年代まで、世界の石油の生産をほぼ独占状態でコントロールしてきた7社は、セブン・シスターズと呼ばれ、この7社のうちの5社がアメリカ資本の会社である。

アメリカは世界の石油の流通にも力を持っているので、他国へのパワーとして使うことができる。

主要国のエネルギー自給率を見ると、アメリカは86%、イギリスは58%、フランスは54%、ドイツは38%、中国は86%、日本はわずか6%である。100%を超えている国は、カナダ172%で、ロシアも183%である。(石油、石炭、ガス、原子力、水力、その他を含む)

アメリカはエネルギーの自給できていないが、ロシアは自給できているので落ち着いているのか。無機起源説がロシアから生まれたことも興味深い。

最近は化石燃料ではなく炭化水素燃料と呼ぶ

さて、無機起源説では石油は化石ではないので、炭化水素燃料(hydrocarbon fuel)であると言う。これは従来の化石燃料(fossil fuel)に対して、とてもフラットな表現である。有機か無機かにかかわらず、炭化水素でできているから、どちらであっても間違いとはならないのだ。

無機=生物によらない、という意味では、abiotic oil (非生物のオイル)という表現も見られる。こちらは化石燃料に対立する意味合いが強い。

無機起源説を信奉していても、そうでなくても、一方に与していて学説が覆されると学者としても損失を被る可能性もある。

そこで、最近の研究者はどちらに転んでも問題の生じない「炭化水素燃料」という用語を使うことが広まっている。欧米ではもちろん、日本でも広がってきた。

石油の主な成分はどこでもおおよそ同じであるが、細かく分析すると、実は一定ではなく、数万の化合物が混ざり合っており、その割合も産地や油田により様々である。

石油と発電は、社会と経済や軍事、そして国そのものを動かしている。世界の富のかなりの部分はこれで成り立っている。学者は、石油系の大企業がバックにあればこそ研究費がもたらされる。いろいろな立場が強く影響していると考えられる。

新たな技術に期待が・・・

炭化水素燃料を海水から合成する技術がアメリカで開発されたという。海水から二酸化炭素を電気分解して取り出した後、太陽光を用いて液体炭化水素燃料を合成する技術だそうだ。

電気分解するのでは何だか効率が悪そうだと思ったら、アメリカ海軍の開発だという。船の燃料補給は移動が高コストなのだ。海上で太陽光発電をしながら、船の燃料が作れたらこれは素晴らしいことだ。

温暖化防止の観点で言えば、せっかく海水に溶けている二酸化炭素を電気分解するのは、明らかに時代に逆行している。しかし、トランプ大統領率いるアメリカにおいてはやはり地球温暖化防止の国際的枠組「パリ協定」から離脱しただけのことはある。

では、空気中の二酸化炭素を吸着してエネルギーに変えられないか? というと、これはアウディが開発したらしい。

他にも紫外線を照射して、炭化水素を作る方法も考案されているようである。これは日本人の今中忠行教授(京都大学名誉教授、現在は立命館大学で研究)が考案し「3円の電気代で100円分の石油が作れる」という触れ込みで話題になった。

その後の情報が見つからずいろいろと探索中だ。コストが3円で100円分ならば、あとは量産できる生産性かどうかなどが気にかかる。


参考:
独アウディ、水と空気で合成燃料をつくる試験工場」(日本経済新聞)
米国石油地質家協会(AAPG)研究会議「石油の起源、無機起源か有機起源か」に参加して(財団法人日本エネルギー経済研究所 総合戦略ユニット 主任研究員 中島敬史)
産業技術総合研究所「揮発性成分の火山学」


その他の記事:
・「相対湿度から絶対湿度への計算方法
・「マグロの世帯当たり消費量(都道府県別)とメチル水銀
・「食品添加物の安全性未確認リスト(2018年度版)
・「原発と駐留米軍との密接な関係

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