靴のサイズと日本人の足について

靴のサイズというのは、自分では分かっているようでいて、結構わかっていないものである。

靴のサイズとは?

靴屋に行くと、店員さんから「サイズいくつですか?」と聞かれて、出してもらった靴を履くと大きかったり小さかったりして何度も取り替えてもらうことになる。

メーカーや靴の種類によってもサイズというのは実は一律ではない。靴は立体的な構造なのでそんな一つの数字だけで表現できるものではない。もちろん国によっても違う。

とは言うもののやはり何らかの指標は必要で、まずサイズと言えば一般的には靴の長さのことだ。

また、足全体がホールドされなくて、ちょっとゆるいなあと思い、一つ小さいサイズを履いてみると、今度はつま先が当たってしまう、なんてこともある。

この長さのサイズとは別に、Eとか、3Eなどのサイズもある。知らないとちょっと複雑なことになっているのだ。

サイズには長さと幅がある

長さは良いのだが、足幅や厚みについては、日本では本当に不思議なことが起こっている。普通に売っている靴は、何でもかんでもほとんど全てが3Eになっているのだ。これは足の幅や厚みを示すもので、日本では足囲あるいはワイズと言う。

足囲(ワイズ)は、細い方からA、B、C、D、Eとなる。この中ではEが一番太いサイズである。靴は欧米から入ってきたので、欧米人の足の形によるところが大きかったのだろう。

足囲(ワイズ)は、足の親指の付け根の骨の飛び出したところから小指の根元までをぐるりと一周した長さを測る。これを足囲とかワイズとか言う。同じ意味である。ワイズがAからBへと1段階上がると、足囲は6mmも変化する。

欧米ではAからEで90%以上の人がカバーできるという。日本に靴が入ってきた明治時代には、靴は大変に高級なものだったので、基本は一人ずつ足型を作ってオーダーメイドしたので、サイズの問題はなかったのだ。

日本の靴はなぜほとんどがEEEなのか?

昭和になって、多くの人が靴を履くようになり、出来合いの靴がたくさん売られるようになった時に、靴を履かせてみると、時々ゾウの足のように足首が太くて甲高な人がいた。

「やいやい、ちっともきつくて履けねぇじゃねえかい」ってんで、「それじゃあ、太い靴を作りやいいんでしょう」ということで、太い靴を作っておけばいいという風潮ができてしまったようで・・・
(これは勝手なイメージですが・・・)

日本では、Eよりももっと太い靴が作られ、EE(2Eとも言う)ができた。さらにもっと太いEEE(3E)もできた。今ではJISで規定されていて、EEEの次が4E、そしてF、そしてGである。

「日本人の足は欧米人に比べるとはるかに甲高で・・・」という説明を聞いたこともあるかもしれないが、実はこの話には根拠が見当たらない。太い人はいるけれど、平均すればそう大きな違いはないようである。

とにかく日本の靴業界は大きい3Eを作って、種類を減らしてコストを減らして、量販する際の利益を確保しようとしたということである。

今もEEEばかり!

時代は下って、平成の時代になっても、いまだにEEEが全盛の時代のままであるのは、実に奇妙なことである。というのは、現代の日本人男性の一番多いサイズはDなのである。

平成に入ってから、人々の足が細くなったのかというと、やはりそうではなくて、もうちょっと前の1980年時点でも一番多いサイズはやはりDであったようだ。

明治時代に西洋から靴が入ってきて、その当時は靴は高級品であり、オーダーメイドで作るものなので靴屋は客の足型を取るわけだから、これはぴったり作れたわけだ。

それにしても、日本ではこのワイズあるいは足囲について知らなさすぎるのではないか? 消費者が知らないから業界がその上にあぐらをかいてしまうということはよくある。

本来、靴は甲の高さに合わせるもの

靴は甲の高さに合わせることがフィットの基本になっている。大きめが良いということはない。EEEをDに合わせるには、足囲(ワイズ)が18mmもの差があるので、それを中敷でカバーするというのは、はっきり言って無理である。

そういうことは、誰からも教えてもらえない。学校でも教えられず、お父さんもお母さんも知らないことなのだ。

靴屋さんにも苦労がある

そもそも靴というのは、男性用でサイズが23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28くらいまであるとして、さらに厚みをA、B、C、D、E、EE、EEEを揃えようとすると、長さが11種類で厚みが7種類ということで、77種類にもなってしまう。

一つのデザインの靴で77種類も小売店が持つというのはどう考えても現実的ではない。たった10種類の靴を置いただけで、倉庫に770種類の在庫を持つというのはどう考えても無理である。

それではメーカーも小売店もどちらもやっていけない。

そこで、靴業界の利害も一致するということで、製造する靴のワイズを一番大きい人に合わせてしまえば良い、という悪知恵が働いたのか、EEEの靴だけを作るようになってしまったようだ。工場も、卸も、小売店も、店の在庫を少なくしてコストを下げるために、EEEを作り続けるのである。

そもそも靴屋に行って、その日に履いて帰ろうなんて思う人はもういなくなって久しい。にもかかわらず、古い体質の靴屋さんたちは、すぐ履きたいに違いない、だから在庫がいる、と考えてしまうようだ。

靴と健康の関係

時代は移り変わり、現代では、靴と健康は切っても切れない関係だ。靴は健康を育むのである。全部EEEで良いわけがないのであるが、靴の業界では、歩く人の健康を考えている気配が全くうかがえない。C、D、E、EEの靴を作らないという態度が、結果的にこのことを裏付けていると言って間違いではない。

外反母趾も靴ズレも靴の不調から来る。背骨や腰への影響も見過ごせない。

まだ病気にはなっていなくても、街中では踵(かかと)がゆるくて浮いてしまっている人とか、靴幅が大きすぎるために左か右に片減りしてしまっているとか、いろいろだ。

靴も多品種少量生産に!

そもそも、一つの靴の種類を在庫として持って商売をしようとしたら、消費者の健康も考えると大量のサイズとワイズの組み合わせが必要になってしまう。

先ほどは23センチ以上で28センチまでの範囲で計算したが、実際にはもっと上や下のサイズを超えた需要がある。EEEの上には、4E、F、Gがあり、Aの下にはAA、AAAがあるので、そうすると770種類どころではない膨大な数になってしまう。

1種で1000を超えるヴァリエーションを持つなんて、通常のストックビジネスとしては、どう考えても無理である。強いて例えると、メガネ屋さんに似ているかもしれない。でも相違点は大きい。メガネは近視、遠視、老眼、遠近両用、などがありそれぞれ度数もあり、レンズの種類も多い。当然だが左右のレンズの仕様も異なるのである。さらに医者の処方箋も要る。

眼鏡店が経営できるのは、一言で言えば、原価に対して何倍もの高価な価格が維持できていることであるが、これは医療器具として保護されているからだ。

でも、靴には処方箋はいらない。足医者もいない。だから、自由にやって良いのであるから、自由にやったとしても何ら問題はない。そうしないと生きていけない。

日本人は洗脳されている!?

日本の靴業界では、在庫をカットするために、まず一番売れないサイズを取り除くべく、まず24cm以下がカットされてしまう。「どうしても数が出ないと商売にならないんでねぇ」と言うのである。

足囲(ワイズ)については、大は小を兼ねるというわけで幅広の厚みのあるEEEの靴だけを作って、ゆるかったら紐を締めなさい、それでもダメなら中敷を買いなさい、という商法になった。

でもこれは無理なのだ。EEEとDの差は足囲で18mmもある。これだけ違うと、もう中敷で調整ということはかなり難しい。

今までの時代は確かに、こんな有様であったわけだけれど、今では工場の自動化も進んできた。お客さんもインターネットで注文する。ITで効率化することで、もっと柔軟なサービスができるはずだと思う。お店では、サイズの調整とか履き心地をかを確認して、色とかデザインとかの要望をオーダーして、受注生産するようなことも可能である。

消費者の声で世界は変わっていく

日本の靴業界は、現代の平均がDであるということが知れ渡ってきても依然として、3Eのみを作り続けている。まだ洗脳が消えていないと思っているようだ。業界が旧体質のままでは大変に心配である。日本においても海外のメーカーが売上を増やしている。

最近では、足のサイズを測ってくれるお店も増えてきた。これによって、きちんとしたシューフィットができる。ただし、せっかくシュー・フィッターに見てもらっても、日本人の平均であるワイズDの人々は、日本ではワイズDの靴は全く売っていないので、やはり海外製品を発注することになる。

海外では日本人にフィットする、DとかEとかの靴をすぐさま送ってくるのである。今、一番の需要があるのはワイズDとEである。

日本の靴業界の人たちはこんなビジネスチャンスを目の前にして、この大きな需要のほとんどを海外メーカーにただで譲り渡している状況である。本当に忍びない。早く目を覚ましてほしい。

確かに、市販の靴を調整してフィットさせたり、中敷を特注してさらに圧力を調整したりできるお店もできて、選択肢もぐっと増えてきた。

しかし、もう一回言うが、靴業界の人々よ、目を覚ましてほしい。

足と健康との関係性が注目されるようになったのは、靴屋の宣伝のおかげでは全くない。消費者の声で高まっているのだ。自分の足がDだということを気付いたのは、靴屋さんが教えてくれたからではない、自分で測ったからだ。誰も靴屋さんはそんなこと教えてくれなかった。

かつて一足30万円もかかった革靴のオーダーは今ならオートメーションとITの活用でずっと安くできるようになるはずである。そこには大きな需要が見込めるのである。

もっと自由に快適な靴が選べるように世の中が進んで行ってほしいと思う。

 


【参考】靴のサイズ規格(JIS S 5037 1998)

男子用・足囲(mm)

男子用・足幅(mm)

女子用・足囲(mm)

女子用・足幅(mm)

 

【補足説明】
・足幅:足の親指の付け根と小指の付け根の、
二つの出っ張りの幅を直線で測ったもの
・足囲:その同じ場所をぐるりと一周した長さ
・足長:かかとの尖っているところと足指第2指を
直線に対して垂直に、一番長い部分の長さ

 

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