靴のサイズ合わせと足のサイズの測り方〜日本人は誤解している!

自分の靴のサイズを知っているつもりでも、実は結構分かっていないものである。特に日本人は、自分の正しいサイズを知らない人が圧倒的に多い。

靴のサイズとは?

靴屋に行くと、店員さんから「サイズいくつですか?」と聞かれて、出してもらった靴を履くと大きかったり小さかったりして何度も取り替えてもらうことになる。

まずここからおかしいのである。サイズといえば長さのことしかない。しかも靴屋の店員の多くは、専門性がないので客に聞かないと分からないのである。歯医者に行って、差し歯のサイズはいくつにしますか? と聞かれることはない。彼らがプロだからである。

靴は、靴の用途や種類によっても、またメーカーによっても、さまざまなサイズがあり、一律ではない。

まず足の形を想像してみてほしい。足首には関節があって、かかとがあり、くるぶしがあり、足の先には5本の指があり、それぞれに複数の関節があり、かかとから指先まで複雑な形の骨格と肉がついており、その下には土踏まずというアーチがある。

このような複雑か形状の足を、靴は立体的な構造によって包み込むのである。とすれば、そんな一つの数字だけで表現できるわけはない。

とは言うものの、やはり何らかの指標が必要となるので、まず第一に靴の長さをはかる。これは間違いではない。しかし、これが全てでは決してないのだ。

ちょっとゆるいなあと思い、一つ小さいサイズを履いてみると、今度はつま先が当たってしまう、なんてことがある。足の幅や厚みが人それぞれ異なるからで、これは足囲という尺度に関係する。

足囲(あるいはワイズという)というのは、足の親指の付け根のちょっと飛び出したところから、小指の付け根までの周囲をぐるりと測った長さのことである。これが、Eとか、EE、EEEなどのサイズだ。

サイズには長さと幅がある

長さはヴァリエーションが多いのだが、足幅や厚みについては、日本では本当に不思議なことに、普通に売っている靴のほとんど全てがEEEになっているのだ。これは足の幅や厚みを示すもので、日本では足囲あるいはワイズと言う。

足囲(ワイズ)は、細い方からA、B、C、D、Eとなる。この中ではEが一番太いサイズである。靴は欧米から入ってきたので、欧米人の足の形によるところが大きかったのだろう。

足囲(ワイズ)は、足の親指の付け根の骨の飛び出したところから小指の根元までをぐるりと一周した長さを測る。これを足囲とかワイズとか言う。同じ意味である。ワイズがAからBへと1段階上がると、足囲は6mm変化する。6mmは大きい。

足幅は、足の親指の付け根の骨の飛び出したところから小指の根元までの長さを直線的に測ったものである。ものさしを床に置いて、その上に足をのせ、足の親指の付け根の骨の飛び出したところから小指の根元までの長さを測ることができる。

足幅も靴底と合っていないといろいろと不具合が起こる。ゆるすぎると擦れたり足指に力が入って疲れたりする。きついすぎると足が痛んだりすることになる。

靴のサイズは、足長(長さ)、足囲(足幅の周囲の長さ)、足幅の3つが基本となる。

日本の靴はなぜほとんどがEEEなのか?

欧米ではAからEで90%以上の人がカバーできるという。日本に靴が入ってきた明治時代には、靴は大変に高級なものだったので、基本は一人ずつ足型を作ってオーダーメイドした。当時は、サイズの問題という以前に、草履や下駄から靴に移行するということ自体が大転換であっただろう。

昭和になって、多くの人が靴を履くようになり、出来合いの靴がたくさん売られるようになった時に、靴を履かせてみると、時々ゾウの足のように足首が太くて甲高な人がいた。

推測であるが、足を足袋以上に硬い素材でぎゅっと締め付けるという習慣がなかった日本人にとっては、ゆるい靴が好まれたのかもしれない。

日本では、Eよりももっと太い靴が作られ、EE(2Eとも言う)ができた。さらにもっと太いEEE(3E)もできた。今ではJISで規定されていて、EEEの次が4E、そしてF、そしてGである。

「日本人の足は欧米人に比べるとはるかに甲高で・・・」という説明を聞いたこともあるかもしれないが、なかなか根拠となるデータを見つけられない。確かにものすごく甲高の人はいる。平均すればそう大きな違いはないとも想像されるが、日本人の分布がよく分かっていないのである。

とにかく日本の靴業界は大きいEEEを作って、種類を減らしてコストを減らして、量販する際の利益を確保しようとしたということだ。

日本人の足はワイズDが多いのに!

時代は下って、平成の時代になっても、いまだにEEEが全盛の時代のままであるのは、実に奇妙なことである。というのは、現代の日本人男性の一番多いサイズはDなのである

平成に入ってから、人々の足が細くなったのかというと、やはりそうではなくて、もうちょっと前の1980年時点においても一番多い男性の足のサイズはやはりDであったようだ。

靴屋さんが、売れている靴で一番多いのがEEEであるということから、日本人の足はEEEが一番多いと言うことがあるが、これは明らかに間違いだ。自分の足に合った靴を選べないのだから。

また、「日本ではEやEEの足が多い」という説もあるが、これも靴の業界から出てきたデータではないだろうか。特に根拠が見つからない。実際の日本人の足の足囲(ワイズ)は、A、B、C、D、E、EE、EEE、EEEE、F、Gの広い範囲に広がっている。

明治時代に西洋から靴が入ってきて、その当時は靴は高級品であり、オーダーメイドで作るものであり、靴屋は一人ずつ客の足型を取るわけだから、これはぴったり作れたわけだ。

それにしても、日本ではこのワイズあるいは足囲について知らなさすぎるのではないか? 消費者が知らないから、業界がその上にあぐらをかいてしまうということはよくある。

本来、靴は甲の高さに合わせるもの

靴は甲の高さに合わせることがフィットの基本になっている。大きめが良いということはない。EEEをDに合わせるには、足囲(ワイズ)が18mmもの差があるので、それを中敷でカバーするというのは、はっきり言って無理である。

こういうことは、誰からも教えてもらえない。学校でも教えてもらえないので、お父さんもお母さんもまず知らないと思った方が良い。

靴屋さんにも苦労がある

そもそも靴というのは、男性用でサイズが23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28くらいまであるとして、さらに厚みをA、B、C、D、E、EE、EEEを揃えようとすると、長さが11種類で厚みが7種類ということで、77種類にもなってしまう。

一つのデザインの靴で77種類となる在庫を小売店が持つというのはどう考えても現実的ではない。たった10種類の靴を置いただけで、倉庫に770種類の在庫を持つというのはどう考えても無理である。

それではメーカーも小売店もどちらもやっていけない。商売が成り立たなくなってしまう。

そこで、靴業界の利益を拡大するために、製造する靴のワイズを一番大きい人に合わせてしまえば良い、という知恵(悪知恵?)が働いたのか、EEEの靴だけをたくさん作るようになってしまった。工場も、卸も、小売店も、店の在庫を少なくしてコストを下げるために、EEEを作り続けるのである。

そもそも靴屋に行って、その日に履いて帰ろうなんて思う人はもういなくなって久しい。にもかかわらず、古い体質の靴屋さんたちは、すぐ履きたいに違いない、だから在庫がいる、と考えてしまうようだ。

靴と健康の関係

時代は移り変わり、現代では、靴と健康は切っても切れない関係だ。靴は健康を育むのである。全部EEEで良いわけがないのであるが、靴の業界では、歩く人の健康を考えている気配が全くうかがえない。C、D、E、EEの靴を作らないという態度が、結果的にこのことを裏付けていると言って間違いではない。

外反母趾も靴ズレも靴の不調から来る。背骨や腰への影響も見過ごせない。

まだ病気にはなっていなくても、街中では踵(かかと)がゆるくて浮いてしまっている人とか、靴幅が大きすぎるために左か右に片減りしてしまっているとか、いろいろだ。

靴も多品種少量生産に!

そもそも、一つの靴の種類を在庫として持って商売をしようとしたら、消費者の健康も考えると大量のサイズとワイズの組み合わせが必要になってしまう。

先ほどは23センチ以上で28センチまでの範囲で計算したが、実際にはもっと上や下のサイズを超えた需要がある。EEEの上には、4E、F、Gがあり、Aの下にはAA、AAAがあるので、そうすると770種類どころではない膨大な数になってしまう。

1種で1000を超えるヴァリエーションを持つなんて、通常のストックビジネスとしては、どう考えても無理である。強いて例えると、メガネ屋さんに似ているかもしれない。でも相違点は大きい。メガネは近視、遠視、老眼、遠近両用、などがありそれぞれ度数もあり、レンズの種類も多い。当然だが左右のレンズの仕様も異なるのである。さらに医者の処方箋も要る。

眼鏡店が経営できるのは、一言で言えば、原価に対して何倍もの高価な価格が維持できていることであるが、これは医療器具として保護されているからだ。それに何よりも、メガネの形にレンズの形状を合わせることができる。

一方で、靴には処方箋はいらない。足医者もいない。だから、自由にやって良いのであるから、自由にやったとしても何ら問題はない。そうしないと生きていけない。

日本人は洗脳されている!?

日本の靴業界では、在庫をカットするために、まず一番売れないサイズを取り除くべく、まず24cm以下がカットされてしまう。「どうしても数が出ないと商売にならないんでねぇ」と言うのである。

足囲(ワイズ)については、大は小を兼ねるというわけで幅広の厚みのあるEEEの靴だけを作って、ゆるかったら紐を締めなさい、それでもダメなら中敷を買いなさい、という商法になった。

でもこれは無理なのだ。EEEとDの差は足囲で18mmもある。これだけ違うと、もう中敷で調整ということはかなり難しい。18mmのワイズの差を中敷で調整しようとすると、体重をかけた時の厚さが9mmの中敷が必要になる。18mmを2で割った数字である。厚さが9mmもある中敷は簡単には売っていない。きちんと足をホールドする必要もある。スポンジのような柔らかいものではダメなのだ。

今までの時代は確かに、こんな有様であったわけだけれど、というか今もそうなのであるが、次第に工場の自動化も進んできている。お客さんもインターネットで注文する。ITで効率化することで、もっと柔軟なサービスができるはずだと思う。お店では、サイズの調整とか履き心地をかを確認して、色とかデザインとかの要望をオーダーして、受注生産するようなことも可能だ。

消費者の声で世界は変わっていく

日本の靴業界は、現代の平均がDであるということが知れ渡ってきても依然として、EEEのみを作り続けている。まだ洗脳が消えていないと思っているようだ。業界が旧体質のままでは大変に心配である。日本においても海外のメーカーが売上を増やしている。

最近では、足のサイズを測ってくれるお店も増えてきた。これによって、きちんとしたシューフィットができる。ただし、せっかくシュー・フィッターに見てもらっても、日本人の平均であるワイズDの人々は、日本ではワイズDの靴は全く売っていないので、やはり海外製品を発注することになる。

海外では日本人にフィットする、DとかEとかの靴をすぐさま送ってくるのである。今、一番の需要があるのはワイズDとEである。

日本の靴業界の人たちはこんなビジネスチャンスを目の前にして、この大きな需要のほとんどを海外メーカーにただで譲り渡している状況である。本当に忍びない。早く目を覚ましてほしい。

確かに、市販の靴を調整してフィットさせたり、中敷を特注してさらに圧力を調整したりできるお店もできて、選択肢もぐっと増えてきた。

しかし、もう一回言うが、靴業界の人々よ、目を覚ましてほしい。

足と健康との関係性が注目されるようになったのは、靴屋の宣伝のおかげでは全くない。消費者の声で高まっているのだ。自分の足がDだということを気付いたのは、靴屋さんが教えてくれたからではない、自分で測ったからだ。誰も靴屋さんはそんなこと教えてくれなかった。

かつて一足30万円もかかった革靴のオーダーは今ならオートメーションとITの活用でずっと安くできるようになるはずである。そこには大きな需要が見込めるのである。

もっと自由に快適な靴が選べるように世の中が進んで行ってほしいと思う。

足の計測の仕方

足の計測の説明である。

  • 足幅:足の親指の付け根と小指の付け根の、二つの出っ張りの幅を直線で測ったもの
  • 足囲:その同じ場所をぐるりと一周した長さ
  • 足長:かかとの尖っているところと足指第2指を直線に対して垂直に、一番長い部分の長さ

まっすぐに立って足に体重をかけた状態で測るのがポイントである。空中に浮かせて測ると正確に測れないので、誰かに手伝ってもらうと良い。計測したら、下の表でどのサイズなのか確かめてください。

「開張足」あるいは「こんにゃく足」

足を地面につけて、力がかかっている状態と空中に浮かせた状態とで、足囲(ワイズ)が大きく変わる人がいる。「開張足」とか「こんにゃく足」とか言う。

そういう時は、まず立った状態で足に力をかけた状態で足囲を測り、次に椅子に座って足囲を測り、その平均を取ると良いというのが、基本的な考え方である。ただし、靴の形状や材質(布や革)の固さなどによっても影響するので、簡単には決められない。

海外の靴のサイズ

海外の靴のサイズは、日本のようなcmとは異なる表記になっている。日本のcm表記以外では、USサイズ、UKサイズ、EUサイズが多い。

海外ではUSサイズ、UKサイズ、EUサイズ

はっきり言って、靴のサイズは、単純な換算式では計算できない。

メーカごとに形が異なるので、サイズ表記を統一できないということだと考えられる。

さらに、アメリカ(USサイズ)では、女性用と男性用では表記が異なる。Nikeのシューズでは、足長26cmのサイズの靴が、女性用だとUS 8、男性用だとUS 9 となっている。

アメリカでは、同じ足長でも、男の方がサイズが1つ大きくなるようになっているのは、大変に興味深い。アメリカ人の男は、女性よりも大きく見せたいということなのではないかと想像される。

単位のベースには、パリポイントの2/3cm(1/4インチに近い)や、バーリーコーンなの1/3インチ(8.46mm)などがある。他には、国際モンドポイント方式などがあるが普及していない。

捨て寸

捨て寸とは、足の指先の先に余裕を持たせた追加の長さのことである。ビジネスで履くような革靴は、先が細くなっているので、実際の長さが26cmであっても、実寸で26cmの足の人は履くことはできないため、1.5cmから2cm程度の余裕を持たせていることが多い。

一般に、革靴では、実寸で26cmの足の人が、26cmの靴を選べば良いように捨て寸が考慮されている。

これは、日本では当たり前で、ビジネスシューズもスニーカーもそのような作りになっている。

ところが、海外では、フォーマルな革靴では捨て寸があるけれども、登山靴やスポーツシューズでは捨て寸がないことが多い。靴を作る元の木型のサイズが、その靴のサイズになっている。

木型が入るのだから、生足も入るのだが、ぴったりで余裕が全くない。人が履くには、余裕が必要だし、指先の形も人それぞれなので、合う合わないがある。

結論としては、靴は実際に履いてみないと分からない。

海外の靴のサイズの換算表

理論値で計算すると、おおよそ以下のようになると考えられる。これは計算上のもので、信用しないでほしい。各メーカーがこのような均一な尺度でサイズを決めているわけではない。

実際にはEU(分数)というものはない。計算上、cmから換算するとEU(分数)になるが、割り切るしかない。切り上げという考えもあるだろうが、ここでは四捨五入とした。

JPN(cm) US UK EU(分数) EU(四捨五入)
22 4 3.5 36 36
22.5 4.5 4 36 2/3 37
23 5 4.5 37 1/3 37
23.5 5.5 5 38 38
24 6 5.5 38 2/3 39
24.5 6.5 6 39 1/3 39
25 7 6.5 40 40
25.5 7.5 7 40 2/3 41
26 8 7.5 41 1/3 41
26.5 8.5 8 42 42
27 9 8.5 42 2/3 43
27.5 9.5 9 43 1/3 43
28 10 9.5 44 44
28.5 10.5 10 44 2/3 45
29 11 10.5 45 1/3 45
29.5 11.5 11 46 46
30 12 11.5 46 2/3 47

靴のサイズ表

靴のサイズ規格(JIS S 5037 1998)を掲載する。(クリックすると拡大表示になります)

男子用・足囲(mm)

男子用・足幅(mm)

女子用・足囲(mm)

女子用・足幅(mm)

 

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