前回の記事:「日本国憲法第9条について(1)〜平和憲法としての日本国憲法」
「日本国憲法第9条について」の続きで2回目だ。
日本の憲法は、1947年5月3日に施行された。今ではゴールデンウィークの中に埋もれてしまったけれど、やはり5月3日は憲法記念日である。日本国憲法は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」が主要な3要素となっており、何だかんだ言ってもやはり崇高な感じがする。
それは、私も子供の頃からそのように教わって育ったこともあるが、大人になってからも、基本的な国家のあり方としては正しいと思う。
1950年の自衛隊は事実上の改憲
1947年に施行されてから70年を超えて、文言が変更されていない現行の憲法というのは世界で一番であるそうだ。(「日本国憲法は世界最長(朝日新聞)」)
確かに文言は変更されていない。
しかし、日本の自衛隊は1954年に設立された。その元となるのは警察予備隊という。これは1950年の朝鮮戦争勃発時にGHQ指令に基づいたポツダム政令によって設立された。
日本人は軍隊を持ってはいけないとアメリカが定めたわけだが、朝鮮戦争の時に、武器弾薬や軍艦、戦艦、戦闘機の補給を行うためには、近隣に基地が必要となる。アメリカの基地はすでにあるが、さらに追加で設立するのはコスト高になるため、日本政府にその準備をさせた。
警察予備隊は、自衛隊と名前を変えて、軍備増強することになったわけだ。
この時に、日本国憲法の第9条の「戦力の不保持」に反するではないか、という議論が国中で沸き起こった。
もっと前の1946年当時は、ガンジーの「非暴力・不服従」ほどではないだろうが、もっと厳密に考えられていたようだ。非武装というのは、完全な非暴力をイメージしていた人々も多かったように思う。
それが、1950年には「軍隊みたいだけど、自衛だけならば良いだろう」と変わっていった。
この時には、憲法の文面を一切変更せずに、解釈だけで内容を変えたわけだ。吉田茂首相の時代である。
これは改憲に近い。いや、もう改憲と言っても良いだろうと思う。
1992年には海外派兵も可能にしたPKO平和維持活動
1991年に湾岸戦争の時の海外派兵である。日本はお金だけ出して、人を出さない動かないと厳しく批判されて、海外派兵を決めた。(アジア諸国は日本の軍隊が海外に出てきてほしくないと思っていたようである)
国連や安保理決議に基づく支援要請に対して、平和維持活動(PKO=Peace Keeping Operations)や国際救助活動を行うために特定の条件のもと海外派兵ができるようにしたわけである。
これは平和維持活動に限定したものだったので、それほど日本国内での反発は強くなかった。
1999年にはアメリカ軍の後方支援を可能にした「周辺事態法」
北朝鮮や中国の動きもあって、アメリカが日本の周辺で軍事活動をする際に、後方支援を出来るようにした法律だ。アメリカの戦争をバックアップする、すなわち日本も軍事行動に同盟国として参加するために、日本国外に出て活動出来るようにした法律である。
1950年に「戦力の不保持」を有名無実にして、今度は米軍が平和維持活動以外で活動している際にも、その支援を日本が海外で出来るようにしたのだ。戦争の支援をするわけだから「戦争の放棄」をもないがしろにしていることになる。
そして、2001年には9月11日のアメリカの同時多発テロを受けて、新たな法律が制定された。
今では名前が変わって、「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」となっており、略語もなく、もはや簡単には名前を言えないようになってしまった。
2001年「テロ特別措置法」(テロ特措法)
対テロ戦争の一環として行う攻撃・侵攻を援助できることを定めた法律である。多国籍軍への支援も視野に入れて、海外派兵ができる内容となっていた。小泉内閣の時に制定されたが、2年間の時限立法として制定された。2回延長したが2007年に期限切れで失効となった。
時限立法としたのは、賢明だったと思う。
2015年の集団的自衛権容認は改憲と同じ
集団的自衛権とは、ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である。
自分の国とお隣の国とが「共通の敵国」から攻撃を受けているような時に、隣の国が攻撃された時に、お隣国を守れる権利ということだ。
これだけを聞けば、ふむ、人道的だと思う。義務ではないので、お隣国を守る必要はない。
ただし、日本にとって言えば、お隣国で一番影響力がある国はアメリカである。アメリカの顔色を窺って、日本は行動しなければならなくなる。アメリカから首相官邸に指令が来れば日本は動かざるをえない。
アメリカが攻撃できない、あるいは攻撃することがアメリカの利益にならないような場合には、日本に軍事行動をさせようとするかもしれない。
さまざまなパターンを考えると、この「集団的自衛権」の影響は大きい。危険も大きい。
日本では2014年7月閣議決定で集団的自衛権の行使が憲法9条の自衛の範囲内で可能であるとした。翌2015年7月16日には安全保障関連法案が衆議院本会議で可決された。
海外に日本の自衛隊が出られるようになったわけで、日本は良識を持って行動するという前提で考えれば、国際協力への余地は広がったことになるのだが、憲法9条に違反しているという声は強い。
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