ピアノ室の防音と換気の問題に取り組む(2)

ピアノ室の防音と換気の問題に取り組む(1)」の続き。

換気とは何と奥が深いのか

研究を重ねてきた経過を報告する。説明はちょっとうまく簡単にできてないが結論は簡単だ。

防音の問題はあまりにも重い。今の防音が効かなかったら、全てをやり直しだ。壁を剥がしてそっくり工事をすると300万円以上のコースになってしまう可能性もある。

まずは換気である。吸って吐く空気が新鮮でなくなると、ぼーっとして眠くなる。よく言うように酸素が足りなくなるのではない。空気には20%も酸素がありいくら呼吸しても大して減ることは無い。

問題なのは、二酸化炭素が多くなってしまうと人体に様々な弊害が出る。二酸化炭素が多くなりすぎると、人は生きていけないのである。

同時給排熱交換型換気装置

やはりこれだ。換気として、目指すものはやはり、同時給排熱交換型換気装置である。

長い熟語を区切ってみると、「同時給排」「熱交換型」「換気装置」ということである。

最初の「同時給排」は換気装置の種別のことである。
・第1種換気 = 機械給気+機械排気
・第2種換気 = 機械給気+自然排気
・第3種換気 = 自然給気+機械排気
第1種は機械的に給気と排気を行うので「同時給排」という。

二番目の「熱交換型」というのは、給気と排気の通り道を熱伝導を起こしやすい材質や経路で接近させて、給気と排気の温度を交換する機能のことである。

「熱交換型」とは、実際のところ、どれだけ効果があるのかはまだ分からない。理論上は効果がありそうだ。

同時給排で熱交換型の機器の性能数値を見ると、熱交換率72%と表記されていたので、そこそこの性能があるのであろうと推測される。

どれだけの性能を考えれば良いのか?

これ以上複雑になると語れなくなるので、ここからは要点に絞ることにする。

必要な換気量を計算する

住宅等の居室では1時間当たり0.5回の換気量が義務とされている。取り締まりや罰則があるようなものではないので守っていない家も多いだろう。まさに我が家はそうだったのだ。

0.5回/時 というのは、1時間で半分の空気が入れ替わるということ。

室内が1500ppmのCO2濃度の時に、外気400ppmの空気が1時間で半分入れ替わるとすると、

(1500ppm+400ppm) / 2 = 950ppm

950ppmに下がるということだ

音楽室の容積は21000リットルであった。これは我が家の実測である。6畳よりひとまわり小さい部屋である。防音にしたところ、部屋の内側に5センチメートルずつ狭まったために、ちょっと狭くなったのである。

これから本題に入っていくのであるが、そもそも空気中の二酸化炭素濃度の数値の意味は何なのだろうか?

気体の場合は体積比だそうだ。CO2が400ppmというのはどういうことか。まずppmはparts per millionで百万分の1が1ppmということになる。400ppmは、400/1,000,000である。

つまり、体積比で0.0004 = 0.04% と言うことだ

そして、ヒトの二酸化炭素の排出量は?

人の呼吸する空気の量はおおよそ一日 8.6m3と言われているようである。これは起きて活動している呼吸と寝ている時とをある程度勘案した数値であるようだ。

人の呼吸の量は、それこそ人それぞれである。標準値を出すのにはそれなりのテクニックが必要である。そこは端折って(はしょって)、人の呼吸は一日で8.6m3ということで進めさせてもらう。

そして、8.6m3の呼吸に対して、呼気中の二酸化炭素の容量を仮に 4% とすると、一日当りの二酸化炭素排出量は 8.6 × 0.04 = 0.34m3となる。二酸化炭素の空気に対する比重は 約1.53 だから、この重さは

・0.34(m3) × 1.2(kg/m3) × 1.53 = 0.6kg となり、
年間では、 0.6kg × 365日 = 220kg となる。

また、別なデータによれば、1人の人間が一年間に吐き出す二酸化炭素の量はおおよそ 168000リットル という。1日に約 480リットル (1時間なら 20リットル)だ。これは一回の呼吸がおよそ500mlで1分間に呼吸が16回とした場合に、1分間に8リットルとなると想定して計算した値である。医学や看護の教科書などでも用いられている。

エネルギー代謝からの計算もある

さらに、またまた別の算出方法もあり、エネルギー代謝から計算するのである。一日2000KCalの食事をとり、エネルギーを消費していると仮定する。仮に、すべてのカロリーを糖質(ブドウ糖)でとったとすれば、ブドウ糖1gが4KCalなので500gのブドウ糖を消費することになる。ここで、ブドウ糖1モルが代謝されると、
C6H12O6 + 6O2 = 6CO2 + 6H2O
となるので 6モルの二酸化炭素が排出される。ブドウ糖の分子量が 180、二酸化炭素が 44 なので、二酸化炭素の量は、(6*44/180)*500 = 約733g となる。一年では、0.733kg × 365 = 268kg となる。食事が全てブドウ糖ということはあり得ないので、あくまでも参考値としての概算である。

そして、生活の状況によっても二酸化炭素排出量は変わってくる。成人1人の呼気中の二酸化炭素濃度は、以下の通り変化する。
・安静時で 1.32%
・極軽作業時で 1.32 ~ 2.42%
・軽作業時で 2.42 ~ 3.52%
・中等作業時で 3.52 ~ 5.72%
・重作業時で 5.72~ 9.02%

ヒトの二酸化炭素量の計算

ここでちょっと世界のヒトの二酸化炭素を計算してみる。
(1) 軽・中等作業時としてCO2濃度=4%と仮定
(2) 分時換気量 =(1分間の呼吸数)×(1回換気量)=16×0.6L =8L/minと仮定。
(3) 1日 = 1440 分
(4) 1日当りのCO2呼気量 = 0.04 x 8 x 1440 = 461 L
(5) CO2の比重量 = 1.78 kg/m3 @30 ℃
(6) 1日当りCO2排出量 = 461 / 1000 x 1.78 = 0.82 kg
(7) 世界人口を73億人とすると・・73億 x 0.82kg = 59億kg = 590万トン

大気の組成は・・・

・大気の組成は、窒素が約78%、酸素が約21%、二酸化炭素が約0.03~0.04%となっている。(これは地球のことです)
・吸気の成分は、酸素が約21%、二酸化炭素が約0.03~0.04%。(と言うけれど、1年間計測したところ、東京大田区で0.030%というのはありませんでした。平均すると0.038くらいであったと思います。)
・呼気の成分は、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%。

・二酸化炭素の密度 = 0.001977 g/cm3 (気体, 1 atm, 0°C)

・二酸化炭素の比重 (空気に対する) = 1.5290
空気の密度は、(0 ℃ 1 atm) 1.293 kg/m3 (乾燥空気)

・絶対零度は、摂氏 -273.15度
密度は温度で変わる。ボイル・シャルルの法則。呼気とその後の温度は異なるのはどう影響するのか?

呼吸した後、温度が下がると、密度などが変わる。その影響は? → これはまた後にして、今は考えないことにする。

容積21m3の部屋で1人で1時間過ごすと二酸化炭素濃度はどれだけ増加するか?

(最初の空気は、酸素が21%、二酸化炭素が0.04%で1気圧とする)
(呼気中の二酸化炭素濃度は3%とし、1時間の呼気量は480リットルとする)
(吸気の酸素と呼気の二酸化炭素の量(体積)は同じとする)

部屋全体の空気:21000リットル
呼気中のCO2濃度:3%
人数:1人

元のCO2量:8.4リットル、0.04% (400ppm)
元の酸素量:4410リットル、21.00%

1時間の呼吸量:480リットル
CO2:14.40リットル →24h 345.6リットル
酸素:-14.40リットル →同量のCO2量を仮定 683.251g

経過時間:1時間
経過後のCO2:22.80リットル、0.1086% (1086ppm)
経過後の酸素:4395.60リットル、20.93%

一人で1時間部屋にいると400ppmだった二酸化炭素が1086ppmに成るということだ。686ppmの増加である。ふう。

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