長いこと車の運転をしてきたけれども、車のタイヤについてちゃんと理解していないことが多かったことに気づき、大切なことを忘れないようにまとめておこうと思う。
現代の自動車のタイヤ
一般的には、現代の自動車のタイヤ、その中でも乗用車のタイヤについて言うと、ほとんど全てがラジアルタイヤと言って良い。大型トラックのタイヤでもラジアル化が進んでいる。
パンクしても80km程度走行できるという、ランフラットタイヤというのもあり、ランフラットタイヤかラジアルタイヤか、という比較をする場合もあるが、ランフラットタイヤも側面を強化したラジアルタイヤである。
自転車のタイヤみたいにタイヤの中にチューブが入っているのが、チューブタイヤである。その後、タイヤのチューブがなくなり、チューブレスになった。バイアスタイヤが開発され、その後、その進化形のラジアルタイヤが主流となったのである。
その他、夏用タイヤ、冬用タイヤという種類分けもあり、この区分は非常に重要である。冬用タイヤというのは、冬に雪が降ったり路面が凍結するくらいに、気温が低くなる地域で使用するタイヤのことだ。
たとえば東京では、寒い地域に遠出をしないのであれば、一年中夏用タイアを使うのが普通で、雪が降れば車には乗らない。年に1日使うかどうかという冬用タイヤを備えている家はほとんどない。
ラジアルタイヤのサイズ表示
メトリック表示
現代の自動車用のラジアルタイヤは、一般にメトリック表示となっている。メトリック表示というのは、例えばこういう表記である。「225/50 R17 94W」 今、乗用車としては、ごく一般的な表記である。
最初の数字はタイヤの幅で、これがインチ表示ではなくメートル法になっているから、メトリック表示という。単位はミリメートルなので、幅は225mm。
順に説明すると・・・
225:タイヤの幅、単位はミリメートル。
50:偏平率(%)、タイヤの高さ(ホイールから外側)割るタイヤの幅。100で割って100分率。タイヤの高さに対して、タイヤ幅が大きくなるほど、数字は小さくなる。
R:タイヤの構造、Rはラジアル。
17:リム径。ホイールの直径で、これは単位はインチ。1インチは2.54cm。あれ? メトリックじゃないじゃないの? なぜか分からないがホイールの直径だけは今でもインチである。ホイールを大きくすることをインチアップという。
94:ロードインデックス、タイヤが耐えられる負荷、重さ。このままでは何kgか分からない。下に換算表を示した。94というのは670kgの重さを支えられるということを示す。
94で670kgを支えられるということは、4輪あれば、合計で2680kgを支えられるということになる。加速・減速時には前後の荷重バランスが大きく変動する。コーナリング中も外側に大きな力がかかる。
そのため、4輪の乗用車の場合は、2輪で車両荷重を支えられるようにするのが安全だ。つまり、この場合には、670×2=1340kgとなるので、車両重量が1340kg程度であれば妥当であろうと思われる。
W:保証される最高速度。これも記号なので、対応表がある。下に速度記号と保証速度の対応表を示した。
普通の人はレース場とかを走ることはないので、速度記号がWで時速270km保証とか言われても全くピンとこないかもしれない。とは言え、これは車の性能の指標であり、車の価値にもつながる。そして、この車を所有するオーナーのステータスにも影響を及ぼし、安全性の担保であるとも言えるかもしれない。
270kmを走れる性能を持ったタイヤで走っているということに、誇りを感じても良いし、安心感に浸っても良いだろう。こういう感覚は、レンタカーなどでは得がたいものである。自動車を所有するオーナーの楽しみ(愉しみ)である。
タイヤサイズの計算
タイヤの幅、扁平率、リム径から、タイヤの外径を計算できる。
タイヤの外径は、「 (タイヤの高さ)*2 + (リム径) 」である。まず、タイヤの高さを知る必要がある。
タイヤの高さは、「 (タイヤ幅) * (扁平率) / 100 」で計算できる。
Excel的に言うと次のようになる。外径をmmで求める。
= ( (タイヤ幅mm) * (扁平率%) / 100 ) * 2 + (リム径インチ) * 25.4
製造年週表示
タイヤの側面に4桁の数字が書いてあって、1019とあるのは、2019年の第10週ということで3月頃ということだ。「年と週」であって、年月ではないので注意。
ロードインデックス:
ロードインデックス | 負荷能力(kg) |
60 | 250 |
61 | 257 |
62 | 265 |
63 | 272 |
64 | 280 |
65 | 290 |
66 | 300 |
67 | 307 |
68 | 315 |
69 | 325 |
70 | 335 |
71 | 345 |
72 | 355 |
73 | 365 |
74 | 375 |
75 | 387 |
76 | 400 |
77 | 412 |
78 | 425 |
79 | 437 |
80 | 450 |
81 | 462 |
82 | 475 |
83 | 487 |
84 | 500 |
85 | 515 |
86 | 530 |
87 | 545 |
88 | 560 |
89 | 580 |
90 | 600 |
91 | 615 |
92 | 630 |
93 | 650 |
94 | 670 |
95 | 690 |
96 | 710 |
97 | 730 |
98 | 750 |
99 | 775 |
100 | 800 |
101 | 825 |
102 | 850 |
103 | 875 |
104 | 900 |
105 | 925 |
106 | 950 |
107 | 975 |
108 | 1000 |
109 | 1030 |
110 | 1060 |
111 | 1090 |
112 | 1120 |
113 | 1150 |
114 | 1180 |
115 | 1215 |
116 | 1250 |
117 | 1285 |
118 | 1320 |
119 | 1360 |
120 | 1400 |
121 | 1450 |
122 | 1500 |
123 | 1550 |
124 | 1600 |
速度記号:
速度記号 | 最高速度(km/h) |
L | 120km |
M | 130km |
P | 150km |
Q | 160km |
R | 170km |
S | 180km |
H | 210km |
V | 240km |
W | 270km |
Y | 300km |
ZR(速度カテゴリー) | 240km超 |
(Y)(速度カテゴリー) | 300km超 |
メーカー毎のマーク
承認タイヤ
タイヤには、自動車メーカーの承認マークの付いたものがあり、メーカーごとの略称がある。メーカーが要求した性能を満たしているという承認が与えられ、そのマークがタイヤに付けられる。
サイズの表示とは少し離れたところに刻印されているが、迷うことのないように下に列挙しておく。
メーカー | 承認マーク |
Alfa Romeo アルファロメオ | AR、ARR |
Alpina アルピナ | ALP |
Aston Martin アストンマーティン | A6A、A7A、A8A、AM4、AM8、AM9、AMP、AMR、AMS、AMV |
Audi アウディ | AO、AO1、AOE |
Audi Quattro アウディ クアトロ | RO1、RO2 |
Bentley ベントレー | B、B1、BC、BL |
BMW (MINI) | ☆ |
Dallara ダラーラ | ME2 |
Ferrari フェラーリ | F、F1、F2、F01、F02、K1、K2、K3 |
Hyundai ヒュンダイ(現代) | HN、GOE |
Jaguar ジャガー | J、J1、JRS |
Lanborghini ランボルギーニ | L、L1 |
Land Rover ランドローバー | LR、LR1、LR2、LR3、LR4、LR5 |
Lotus ロータス | LS |
Maserati マセラティ | MGT |
McLaren マクラーレン | MC、MC1、MC2、MC-C |
Mercedes Benz メルセデス・ベンツ | MO、MO1、MOE、MO-S、MO-V |
MINI (BMW) | ☆ |
NIO 上海蔚来汽車 | I |
Pagani パガーニ | HP |
Porsche ポルシェ | N0、N1、N2、N3、N4、N5、NA0、NA1、NFO |
Tesla テスラ | T |
Volvo ボルボ | VOL |
このリストから漏れている承認マークもあるかも知れない。古くなって、使用されていないものも含めている。
ランフラットタイヤ
ランフラットタイヤはタイヤの両サイドを厚くして、パンクしても80km程度の走行が可能なように作られたタイヤである。
メーカーごとにランフラットタイヤの名称は異なっており、はなはだ混乱するのである。そこで、各社の名称を列挙しておく。
タイヤメーカー | ランフラットタイヤ名称 |
Bridgestone ブリジストン | RFT (Run-Flat Technology) |
Continental コンチネンタル | SSR (Self-Supporting Runflat tyres) |
Dunlop ダンロップ | DSST (Dunlop Self-Supporting Technology) |
Goodyear グッドイヤー | EMT (Extended Mobility Technology) |
Michelin ミシュラン | ZP (Zero Pressure) |
Pirelli ピレリ | r-f (RunFlat) |
Toyo Tire トーヨータイヤ | TRF (Toyo Run Flat) |
Yokohama 横浜ゴム | ZPS (Zero Pressure System) |
ドイツのContinentalのランフラットタイヤはSSR(Self-Supporting Runflat tyres)と言って、タイヤがtyreと綴られている。これはイギリス英語である。
ヨーロッパでは、特にヨーロッパ北部では英語が盛んに使われるがやはりイギリス英語が一般的であるようだ。アメリカ英語であればタイヤはtireと綴る。日本では圧倒的にアメリカ英語が優勢である。
夏用タイヤと冬用タイヤについて
夏用タイヤ(ノーマルタイヤ):
・冬用タイヤに対して夏用タイヤという。いわゆる、ノーマルタイヤのこと
・積雪や凍結した路面ではスリップしやすい
・気温が低くなるほどゴムが硬くなりグリップ力が落ちる
・進行方向に溝、横向きの溝は比較的浅い
・ノーマルタイヤの方がスタッドレスタイヤより軽い
・ノーマルタイヤの方がスタッドレスタイヤより硬い
・扁平率が低い(幅の大きい)タイヤの方が、制動性が高い
冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ):
・積雪や凍結した路面でスリップしにくい
・今の冬用タイヤは、スタッドレスタイヤのこと
・昔あったスパイクタイヤは粉塵が人体に害を及ぼすため禁止された
・気温が-20℃でも硬くなりにくいゴムを使用
・気温が高いほどグリップ力が落ちる
・横向きに水を逃す溝が多く、全体的に細かい溝がある
・スタッドレスタイヤの方がノーマルタイヤより重い
・スタッドレスタイヤの方がノーマルタイヤより柔らかい
・凍結面では、扁平率が高い(幅の細い)タイヤの方が接地圧力が強く止まりやすい
・濡れた路面では止まりにくい
・ノーマルタイヤよりも燃費が悪い
・乾燥路面では止まりにくい
他にも、オールシーズンタイヤというのがあり、夏の使用を前提としながらも積雪にも対応できるようにしたものである。性能はメーカーやモデルによって様々であるようだ。
通常の路面では、ドライ性能、ウェット性能がタイヤを選ぶポイントとなり、積雪路面では、シャーベット性能、圧雪性能、凍結性能が重要となる。