GPSなどの衛星測位システムでは、信号を受信した場所の位置や高度を、どのような仕組みで把握できるのか?
GPS測位の仕組み
アメリカのGPSも、ロシアのGLONASSも中国のBDSも基本的な仕組みは同じである。欧州のGalileoのように双方向のアクセスができるなどの付加価値があるシステムもあるが。
基本的な考え方は、以下の通りだ。
1. 衛星は、衛星自身の現在位置と送信時刻を送信する。
2. 地上側では、衛星の位置と送信時刻を受信して、受信時刻との差から距離を把握する。
3. 最低でも3つのGPS衛星の情報を受信することで、位置を特定する。
3つのGPSの電波を受信できると1点が求まるのであるが、30mを識別するためには受信した時刻を0.0000001秒で正確に把握できないとならない。これは通常の時計では無理なのだ。
4. 4つのGPS衛星の情報を受信することで、受信側に正確な時計がなくても位置を特定できる。連立方程式を解くのである。
位置情報の計算方法
衛星の位置は、基本地球の経度ゼロを原点とした南北に直行する座標で表現される。地球が動かないので、天動説の座標系と言える。
地上のどこにいても衛星との角度などを考える必要がないので、計算がしやすくなるのだ。
衛星iの座標を (xi, yi, zi)、受信機の座標を (x,y,z) とすると、衛星iと受信機の距離riは次の通り。
$$r_{i} = \sqrt { (x_{i}-x)^{2} + (y_{i}-y)^{2} + (z_{i}-z)^{2} } $$
4つの衛星から次のような値が得られたとすると、上記式が4つ並ぶのだが、ここに時間の誤差を織り込むと次のようになる。
$$r_{1} = \sqrt { (x_{i}-x)^{2} + (y_{i}-y)^{2} + (z_{i}-z)^{2} } +c{\Delta}t $$
$$r_{2} = \sqrt { (x_{i}-x)^{2} + (y_{i}-y)^{2} + (z_{i}-z)^{2} } +c{\Delta}t $$
$$r_{3} = \sqrt { (x_{i}-x)^{2} + (y_{i}-y)^{2} + (z_{i}-z)^{2} } +c{\Delta}t $$
$$r_{4} = \sqrt { (x_{i}-x)^{2} + (y_{i}-y)^{2} + (z_{i}-z)^{2} } +c{\Delta}t $$
時間の誤差が入り込んで来るので、予想値の周辺で最適解に調整する。GPS情報が5以上ある場合には、最小二乗法によって誤差を最小とする点を求める。
地上高度は簡単には計算できない
受信機の位置が定まったところで、その位置座標から垂直に下ろした地表面との距離を計算すれば高度が出せるはずだ、というのは道理である。
しかし、実際には地表面の標高は正確に計算されたデータを使っているわけではなく、都市部では正確な測量データはあるけれどもこうしたデーターベースとリンクしているわけではない。地表の凹凸は膨大なデータ量となる。ジオイド高の情報もあれば良いが、通常それらデータも使われない。
高度は100mくらいの誤差も珍しくない。あまり信用できない。
これは衛星の位置と、観測地点との角度にも関係する。上空30度、45度に衛星がいることはあっても、下方には0度未満の衛星は決して存在しないので、垂直方向の測位は基本的に精度が低い傾向がある。
誤差の要因
誤差の要因はたくさんある。
GPSについて言えば、元々のGPSでは民間用への公開データでは、意図的なランダム誤差が加えられていて、それを「アメリカ政府による意図的制度低下」別名SA=Selective Availabilityと言われた。
1. 米国によるSelective Availability(SA)
これは2000年に解除されたが、今後も解除されているかどうか保証はない。以前には最大100m程度の誤差が付加されていた。
2. 衛星の補足数不足
全天の中で4つ以上のGPSを補足できない場合に、データが欠落する。欠落するので、そもそも正確に計算できない。計算の条件を満たしていないので、誤差が最も大きくなるのである。これを誤差と言って良いのか、そもそも計算できていないのである。
3. 電離層遅延による誤差
これは2~20m程度の誤差を生ずるらしい。詳細は分からない。
3. 建物やビルの反射
数mの誤差を生ずるという。この影響は都市部では非常に大きい。
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